メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

毎日フォーラム・ファイル

プラスチックごみ 地球規模の深刻な環境問題

ごみで埋まった水路でプラスチックごみをより分けている男性。ごみはガンジス川を経由してインド洋へ流れる=ニューデリーのタイムール・ナガル地区で2018年6月12日

来年6月の大阪G20テーマに 国内対策強化が急務

 プラスチックによる環境汚染が温暖化に続く地球規模の環境問題として注目を集めている。特に深刻なのが海洋の汚染で、欧州やアフリカではレジ袋やストローなど使い捨てのプラスチック製品の使用規制が進み始めた。一方、日本は島国で海からさまざまな恵みを得ているにもかかわらず、政府の対応は遅れている。安倍晋三首相は来年6月に大阪で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議のテーマとする方針を示しており、国内対策の強化が急務となっている。

     主に石油が原料のプラスチックは第2次世界大戦後、軽くて丈夫で安価な素材として爆発的に普及するようになった。欧州の業界団体「プラスチック・ヨーロッパ」によると、1950年に170万トンだった世界のプラスチック生産量が、2016年には3億3500万トンになった。今後20年間でさらに倍増すると予測されている。

     だが、軽くて丈夫だという性質は、環境問題も引き起こす。海に流れ込むと、海流に乗って世界中に運ばれて行き、分解されないまま環境中にとどまり続ける。

     国連環境計画(UNEP)によれば、15年のプラスチックごみの発生量は世界全体で約3億ドン。半分近くがレジ袋など使い捨ての容器や包装だ。リサイクル率は15%程度で、毎年約800万ドンのプラごみが陸から海へ流れ込んでいるとされる。50年には海中のプラごみの総量が、世界の海の魚の総重量を超えるという予測もある。

     今年2月、スペイン南東部ムルシア州の地中海に面した海岸で見つかったマッコウクジラの死骸から、約29キロものごみが胃や腸から見つかった。大半がレジ袋や漁網などプラスチックだった。このようにプラごみを生物が誤飲することは従来もあったが、近年、特に問題視されるようになったのがマイクロプラスチック(MP)だ。

     大きさ5ミリ以下の微少なプラスチックで、海に流れ込んだプラごみが紫外線や波の作用で細かく砕かれてできる。洗顔料などに使われるマイクロビーズや洗濯などで出る化学繊維のくずもその一種だ。ポリ塩化ビフェニール(PCB)など海中の有機汚染物質を吸着しやすい性質があり、生物が誤飲し、食物連鎖を通じて生態系や人間の健康に悪影響を及ぼすことが心配されている。

     MPによる汚染は世界の海に広がっており、南極海などでも検出されている。日本の環境省の調査では、日本周辺の沖合には1平方キロ当たり172万粒のマイクロプラスチックがあると推計された。世界平均の27倍、北太平洋の16倍で、日本周辺はMP汚染のホットスポットになっている。

     東京農工大の高田秀重教授(環境汚染化学)らの研究で、誤飲されたマイクロプラスチックから汚染物質が溶け出し、海洋生物の脂肪に蓄積することも分かってきた。高田教授は「汚染物質の生物への影響が確認されるレベルではないが、予防的な観点で対策をとるべきだ」と指摘している。

     こうした状況を踏まえ、世界的に使い捨てプラスチック製品の規制が進み始めている。UNEPが今年6月に発表した報告書によると、世界60カ国以上がレジ袋や発泡スチロール容器など使い捨てプラ製品を減らす目的で、使用時に課金したり流通を禁止したりするなどの政策を導入している。

     米コーヒーチェーン大手スターバックスが20年までにプラスチック製の使い捨てストローを廃止する方針を打ち出すなど、民間の取り組みも拡大している。

     世界で輸出されるプラごみの半分以上を「資源」として受け入れてきた中国が、国内の環境対策として、昨年末でプラごみの輸入を原則禁止したことも、世界の規制強化の流れを加速している。

     欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は今年初め、30年までに食品容器などを含む使い捨てのプラスチック包装材を全廃する方針を打ち出した。欧州も大量にプラごみを中国に輸出してきており、中国の輸入禁止措置が今回の方針決定に大きな影響を与えたことは間違いない。

     今年6月にカナダで開かれた主要7カ国首脳会議(G7)でも、プラごみ対策が大きなテーマとなり、ホスト国カナダは使い捨てプラスチック製品の削減を目指す「海洋プラスチック憲章」を提案した。「30年までにプラスチック包装の最低55%をリサイクルまたは再使用し、40年までに100%回収する」など達成期限付きの数値目標を盛り込んだのが特色だ。

     だが、憲章を承認したのはカナダを含む5カ国にとどまり、日米2カ国は署名を見送った。

     中川雅治環境相は「産業界や関係省庁と調整する時間が足りなかった」と説明したが、環境NGOなどからは批判が相次いだ。日本には使い捨てプラスチックを国として規制する仕組みがなく、EUなどに後れをとっている。

     米ジョージア大などの研究によると、10年時点で陸から海へのプラスチックの流入量が最も多いのは中国の最大353万ドン、2位はインドネシアの同129万トン。米国は同12万トンで20位、日本は同6万トンで30位だった。世界的に見て、日本のプラごみ処理体制が整備されていることは確かだ。

     プラスチック循環利用協会によると、16年の日本のプラごみ発生量は899万トン。リサイクル率は84%と高い水準にある。

     しかし、516万トンは焼却時に発生する熱の利用だ。また、中国などに輸出されたプラごみが138万トンあり、これも統計上はリサイクルになる。中国の輸入禁止で国内対策の強化が求められているのは、EUなどと同じだ。

     環境省はG7後、中央環境審議会の下に小委員会を設置し、プラスチックの使用削減やリサイクルの強化などについて議論を始めた。安倍首相は、プラごみの海洋汚染について、大阪で来年開くG20のテーマとする方針を打ち出しており、それまでに国内の対策強化を盛り込んだ「プラスチック資源循環戦略」を策定する。

     海洋プラスチック憲章が掲げる数値目標にかなう内容とならない限り、G20の議論をリードすることができないのは明らかだ。

     プラごみの総排出量が世界で最も多いのは中国だが、1人当たりの排出量は、日本が米国に次いで多い。プラごみ対策に取り組むことは先進国の責務であり、代替品の開発や普及促進は、ビジネスチャンスの創出にもつながる。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 自民総裁選 進次郎氏、制止され早期表明断念
    2. 新潮45 杉田氏擁護特集で社長コメント「常識逸脱した」
    3. 沖縄読谷 米兵、酔って民家侵入 高2長女、妹抱え逃げる
    4. 大相撲秋場所 さらばロシアの巨漢 大露羅、引退を表明
    5. 北九州 マンションで女性4人死亡、自殺か

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです