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自転車活用推進研究会理事長・小林成基さん

小林成基さん

車一辺倒の交通社会を見直す時に

 環境、健康に良く、災害時には機動的に動け、交通混雑緩和にも効果があるとして自転車の役割拡大などを基本理念とした自転車活用推進法が昨年5月に施行され、東京都心部では自転車レーンを表示する道路が増えた。シェアサイクルも目立つ。同様に自転車活用の整備を進める自治体は増えている。推進法成立の裏方として尽力した自転車活用推進研究会の小林成基理事長は「一歩前進したが、まだまだ不十分。自転車を理解する時代にしなれば」と訴える。(聞き手・宗岡秀樹)

     --自転車をめぐる動きが注目されています。

     小林さん 自転車活用推進法が昨年5月1日に施行され、それに基づいた自転車活用推進計画が今年6月8日に閣議決定されました。政府として18の方針、約80項目にわたる計画が書かれています。あまり具体性はなくて、2020年度末までの正味2年半の間にやれることをやっていきたいというものです。

     この方針に基づいて自治体が具体策を練ってそれぞれの計画を作る、ということになっています。ただ、自治体は80項目全部をやる必要はなく、都合のいいところ、やりやすいところ、課題になっているところを取り上げて取り組めばいい。まず取り組んでいくことが重要なのです。

     地方では公共交通がそんなに発達しておらず、交通の偏在などによって活力が失われつつある中で、自転車を含めた交通体系を見直そうという動きの具体的な一歩になるわけです。地方の計画が生かされていくことが期待されています。

     --自治体の取り組みの状況は。

     小林さん ものすごく熱心なところもあるし、自転車のことを全く考えたくない、というところもあります。放置自転車や自転車による事故が多いなどさまざまな問題があって、どこから取り掛かっていいかわからない、そんなことができるような状況ではないというところもあります。そういう自治体でもやがて取り組むことになると思います。

     一方で京都市のように外国人観光客にもわかりやすいように道路にベンガラ色で大きく自転車のマークや矢印を細い路地まで全部書くなどして「見える化」し、ものすごく効果を上げているところもあります。京都は観光振興でも、日常の使用のためでもあります。狭い交差点でぶつからないよう自転車用停止線も書いています。

     県としては愛媛県がダントツです。愛媛県の場合はどちらかといえば観光振興とかスポーツサイクル用なのです。17年度1年間で自転車道を1144キロ整備しました。

     東京は五輪に間に合わせようと警視庁が先頭になって取り組んでいます。都道に白と青の矢印や自転車のナビマークを書くなどしており、今年度末には延べ1000キロを超えます。そのほかに東京都が200キロ、市区町村が200キロくらいやっていますから年度末には1500キロをはるかに超えるでしょう。法律施行前は200キロでしたから足掛け2年で1300キロくらい増えました。

     海外から日本に来る人が4000万人になろうとする中で、右側通行の国の人たちに「日本では自転車は左側通行です」といってもわからない。地面に書くしかない。どういうふうに短時間で日本の交通になじんでもらうかということが先決なのです。

     --自治体の取り組みへの要望は。

     小林さん 自転車活用の法律、推進計画を国が出した理由は、自転車さえ使えればいいのではなくて自転車も使えるような環境を作ろうというのです。そこを自治体はあまり理解しておらず、浸透していないところが問題なのです。少子高齢化、人口減が進む中で、今のように何でも車、というのではなく、もっと軽便な速度の遅い1人乗りか2人乗りの電気で動くようなコミューターみたいなものの登場が想定されます。どこを走るかが問題になって来るでしょうが、そのためのとば口が自転車通行の道なのです。交通機関、移動手段が次にどう移行していくかという視点が欠けています。自転車も使えるようなまちにしておかないと、コミューターの世界が来た時に対応できなくなってきます。

     車はこれから自動運転の時代になるでしょうが、あと20年、30年はかかります。その間に電動車いすに毛の生えたようなものが走り始める時代が来るでしょうが、それが自治体の視野に入っていないのです。

     --自転車の活用について研究会はどのように関わってきたのですか。

     小林さん 活用推進法は自転車好きの市民団体である我々の研究会が提唱したものなのです。自転車を活用するためにどうしたらいいか、ユーザー側の目線で谷垣禎一元自民党総裁が会長だった自転車活用推進議員連盟の勉強会に情報提供をしたり、たたき台になるものを皆で研究して提案したりしてきました。

     我々のライフスタイルに自転車が必要だと、150人くらいの国会議員と自転車の市民団体が一緒になって自転車ユーザーのための法律を作りました。今まで自転車に関しては自転車を規制や抑制する方向の法律ばかりだったのですが、初めて活用、推進するという法律になりました。それにのっとって政府の方針と計画ができました。

     計画を作る段階でも関わっていますが、かなり骨抜きになっています。計画にはまだまだ足りないところがあり満足はしていません。

     --例えばどのような点ですか。

     小林さん 世界の流れを見ると過度に車に依存することから脱しようとしているので、車を少しいじめているのです。都心部の駐車料金をものすごく高くするとか、ロンドンでは中心街に入るのにお金を取るとか、ドイツでは車が通れない道をいっぱい作るとかということをやってきているのです。世界の自転車の計画とか戦略とか法律を見ると、車に少し圧力をかけて自転車の方へシフトさせようという動きをしているのです。日本はそれができていない。車最優先が前提で、付け足しとして自転車のことを少し考えようか、というニュアンスになっていることが不満です。

     車一辺倒の社会から少し引き戻すことが必要なのだけれども、今の法律や計画は諸外国に比べてまだ弱いので、これからそこを主張していきたいと思っています。

     --今後の研究会の役割は。

     小林さん 今は電動アシスト自転車が出てきたし、シェアサイクルもあります。自転車通勤が増えて生活のための自転車が注目され、4度目のブームになっています。

     今後、淡々と計画を推進するよう自治体に求めたり、推進のために相談に応じるなどしていきます。自転車が堂々と安全に快適に走れる道を作らないと活用は進みません。車で埋め尽くされているところを自転車のために少し開けろ、と言い続けます。長い間自転車に対する無関心の時代から無理解の時代が続きました。次は自転車を理解するというか、自転車に親しめるような時代にしなければいけないと思います。

     こばやし しげき 1949年奈良県生まれ。駒沢大文学部卒。会社員、衆院議員公設・政策担当秘書、文相秘書官などを経て2000年自転車活用推進研究会を立ち上げ事務局長、12年理事長、現在に至る。公益財団法人日本サイクリング協会評議員、一般社団法人日本シェアサイクル協会副会長、国土交通省国交大学校講師などを兼ねる。

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