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社説

マケイン氏と米国政治 広く世界を考える大切さ

 1人の政治家の死を悼むにも対立が噴き出してしまう。今の米国が、かつてないほど不安定で特異な状況に置かれているからだろう。

     ワシントンで営まれたマケイン米上院議員の葬儀にはクリントン、ブッシュ(息子)、オバマの歴代大統領をはじめ超党派の政治家や有名人が顔をそろえた。

     だが、共和党内でマケイン氏と対立し、氏への弔意を示すのも渋ったというトランプ大統領は参列せず、ゴルフ場へ向かった。トランプ氏は故人の遺志によって招かれなかったとされる。その意趣返しとして葬儀の日にゴルフをしたのだろうか。

     ベトナム戦争で捕虜になり拷問にも耐えたマケイン氏は米国で英雄視されてきた。大統領にはなれなかったものの、人権など普遍的な価値観を重視する同氏の人気は高かった。

     これに対しトランプ氏は、捕虜になった者は戦争の英雄ではないと言い放ち、マケイン人気を切り崩そうとした。感情的な対立とも見えたが、その根底にはマケイン氏が代表する伝統的な保守政治と、米国の利益を強引に追求するトランプ主義のせめぎ合いがあったのは確かだ。

     だが、命を懸けて戦ったマケイン氏が英雄でないなら米国の軍事も政治も成り立つまい。トランプ氏の意向の反映か、ホワイトハウスの半旗が早々と元に戻され、議会などの批判を浴びてまた半旗にされたのも子供っぽい行為と言わねばならない。

     葬儀でオバマ前大統領は、マケイン氏が民主的討議にとって重要な報道の自由を擁護していたことを称賛し、ブッシュ元大統領はマケイン氏が権力の乱用や尊大な圧政者が嫌いだったと述べた。いずれもトランプ氏への皮肉だろう。

     だが、最も味わうべきはマケイン氏の言葉だ。死の直前に残したという米国民へのメッセージの中で、同氏は世界に憎悪や暴力をもたらす「部族的な対抗心」と愛国心を混同してはならないと述べた。壁の陰に隠れるよりも、むしろ壁を壊さないと米国は弱くなるとも警告した。

     世界の分断や同盟国との対立も恐れず強引な外交・通商政策を推進するトランプ政治への痛烈な批判だろう。マケイン氏の言葉は「部族的」ではない、広く世界のことを考える米国政治の大切さを教えてくれる。

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