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的川博士の銀河教室

514 「パーカー・ソーラー」打ち上げ 太陽の謎を解明へ

 さる8月12日、米国フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からデルタ4ヘビーロケットが打ち上げられ(写真1)、NASA(米航空宇宙局)の太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が太陽に向かう軌道(きどう)に入りました。「パーカー」は、太陽表面からおよそ600万キロという、これまでにない至近距離(きょり)まで接近して太陽を観測します(図)。

     しかし太陽表面は約6000度という熱さです。近づけば近づくほど、探査機はますます厳重な熱防御(ねつぼうぎょ)を強いられますね。かといって耐熱(たいねつ)ばかりに気をつかっていては肝心(かんじん)の観測ができないし、太陽まで送り届けられる探査機の重さには、おのずと限界があります。その範囲(はんい)で観測目的を考慮(こうりょ)しながら、最大限可能な耐熱システムを検討した結果、「パーカー」の最接近距離は600万キロに決められ、1400度まで耐(た)えられる装備を施(ほどこ)すことにしました。地球(半径6400キロ)の100倍以上大きな太陽では、まさに「太陽のすぐそば」です。これまでのいかなる探査機よりも近いところまで行くわけです。

     炭素繊維(たんそせんい)でできているよろい(耐熱板(たいねつばん))は、厚さが10センチもあります。予定されている7年間のミッション期間中に太陽を24周めぐる予定です。太陽は「コロナ」と呼ばれる大気層に包まれており、そこの温度は数百万度もあります。表面(6000度)よりはるかに高温になっている原因については、これまで日本の「ひのとり」「ようこう」「ひので」などをはじめとする太陽観測衛星が大活躍(だいかつやく)し、かなりその謎(なぞ)が解かれてきています。「パーカー」は、人類史上初めて至近距離まで近づいて、これまでの成果に、さらに決定的な証拠(しょうこ)を集めてくれるに相違(そうい)ありません。

     太陽からは「太陽風」という電気を帯びた粒子(りゅうし)が大量に高速で噴(ふ)き出していて、私たちの生活とも深いつながりがあることは聞いたことがあるでしょう。実はこの太陽風の存在を1958年に予言したのが、ユージン・ニューマン・パーカーという米国の科学者で、太陽風(solarwind)という呼び方も彼(かれ)が提案したものです(写真2)。太陽の研究に一時代を築いた彼の名が、この記念すべき探査機につけられました。そして、打ち上げに際して募集(ぼしゅう)したところ、実に113万人を超(こ)える人々が名前を寄せて来ました。「パーカー」には、その全員の名前がパーカーの写真やその記念すべき論文とともに搭載(とうさい)されています(写真3)。


    的川泰宣(まとがわやすのり)さん

     長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


    日本宇宙少年団(YAC)

     年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


     「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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