メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

Shall・we・バレエ?

平成の世、主人公は死なず=斉藤希史子

 8月に再演された牧阿佐美バレエ団の「飛鳥 ASUKA」は、結末が改変されていた。牧が2年前に復刻した母・橘秋子の遺作。今回さらに手を入れ、「未来への希望が差し込む」終幕へと昇華させたのである。

     主人公の乙女は竜神の妃(きさき)に選ばれるも、幼なじみへの恋心に引き裂かれて命を落とす--これが、半世紀前に描かれた運命だ。新版では、恋人たちの絆を目の当たりにした竜神が霊力を振るい、乙女は息を吹き返す。

     今月末にNBAバレエ団が初演するリン・テイラー・コーベットの「リトルマーメイド」も「めでたしめでたし」で幕となる。原作は救いのない最期を迎えるアンデルセンの「人魚姫」なのだが……。最近の客席から「主人公の死」への拒絶反応を感知したのが改変のきっかけだと、牧は話していた。ひょっとするとディズニー映画への傾倒が、我々の「悲劇への耐性」を弱めたのかもしれない。民話がすべからく内包する毒を抜き去り、「夢」を見せることに徹しているからだ。ディズニーの世界では、マーメイドはもちろん「ノートルダムのせむし男」さえも、力業で幸せをつかむ。

     しかし強引なハッピーエンドといえば、筆頭は「白鳥の湖」だ。帝政ロシア期、ヒロインは呪われた身を湖に投げていた。ソビエト時代に入ると一転「王子と結託し、愛の力で悪魔を倒す」ように。「正義は勝つ」とのプロパガンダであったらしい。現代では「2人は入水するが、天国で結ばれる」などの折衷型も見られ、多様化している。

     英ロイヤル・バレエは31年ぶりに同作を改訂し、マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフ主演のライブビューイングが世界中で評判を取った。演出のリアム・スカーレットが選んだのは、悲劇バージョン。ヒロインが命を絶つことで呪いは解けるものの……。暗示的な幕切れが、深い余韻を残す。演劇性を重視するお国柄ゆえか。日本での公開期間は先月末で終わったが、東京のTOHOシネマズ日本橋と日比谷で、17日にアンコール上映される。

     平成最後の夏を彩った大団円と悲劇。未来のバレエファンはどんな結末を好むのだろうか。=次回は10月15日掲載

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
    2. 高校野球 誤審で甲子園行き明暗…終了一転逆転 岡山大会
    3. 全国高校サッカー 県大会 西京、5年ぶり全国切符 高川学園の猛攻しのぐ /山口
    4. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
    5. 高校野球 練習試合で頭に死球、熊本西高の生徒が死亡

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです