家財散乱、片付け進まず 厚真・安平
最大震度7の地震を記録した北海道厚真町などでは、被災した住民が自宅の片付けを進めている。避難所から自宅に戻ったり仕事に出かけたりする人も多く、散乱した家財道具の山を前に疲労の色をにじませている。
30分作業しては10分ソファで休憩を繰り返す。全壊家屋が19棟に上った厚真町。山田真知子さん(68)は1人で居間に散らばった衣類を使えるものと捨てるものに分けていた。台所では棚から落ちた食器が割れ、洗面所では液体洗剤が床にこぼれている。「いつになったら終わるのか」。山田さんはため息をついた。
夫(71)と2人暮らし。ともにけがはなかったが、築約40年の自宅は、外壁にいくつも亀裂が走り、居間の窓ガラスは割れる。玄関先のブロック塀が崩れ、タンスや食器棚もほとんど倒れた。便器が持ち上がり、床から外れたため、夫婦で避難所に身を寄せている。
日中に自宅に戻るが、夫は脳梗塞(こうそく)で目や足が不自由なため片付けができない。離れて暮らす長男や親戚の手を借りられない日は、1人での作業を余儀なくされる。山田さんは「早く穏やかな日常が戻ってほしい」と語る。
隣の安平町でも11棟の住宅が全半壊した。町内で電器店を営む岩井良夫さん(70)は無事だったものの、店を兼ねる築40年の自宅は、コンクリートの基礎にひびが入り、脱衣所とトイレの天井が崩れた。食器棚のガラス扉は砕け散った。「頭が真っ白になって、何から手をつけていいか分からなかった」
地震があった6日から妻と片付けを始めたものの、乾電池や家電を買い求める住民が来店。壊れたテレビアンテナの修理工事の依頼もある。妻も仕事を抱えており、片付け作業は進まない。
「人手はほしいけど、何を残して何を捨てるか、私たちにしか決められない。結局は自力でやるしかない」。読書家という岩井さんは、棚から落ちた大量の本を見つめて、そうつぶやいた。【土江洋範】