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北海道地震

水道復旧、大幅遅れ 6000世帯、再建遠く

友人が運んで来た水を使って洗った洗濯物を脱水にかける小山里美さん(右)=北海道厚真町で2018年9月9日午後3時53分、山崎一輝撮影

 最大震度7を観測した北海道の地震で、上水道の復旧が大きく遅れている。電気や交通などの生活インフラはほぼ日常に戻ったが、厚真(あつま)町や安平(あびら)町など5市町約6000世帯で断水が続き、生活再建の見通しが立たない。一方、厚真町の土砂崩れ現場では、安否が最後まで分からなかった山本辰幸さん(77)の死亡が確認された。

     約1950の全世帯で断水が続く厚真町。小山里美さん(35)が自宅で、生後7カ月の長女茉白(ましろ)ちゃんの服を手洗いしていた。バスタブにためた水を少しずつたらいに移しながら、小さな肌着を1枚ずつこすり合わせる。「電気が復旧したから乾燥機は使えるけど、水はまだダメ。赤ちゃんの肌着だけは毎日取り換えてあげたくて」。額には汗が光る。

     6日未明の地震直後、町職員の夫(41)は災害対応に出たため、小6、4、3年の男児と茉白ちゃんを連れて、役場近くの避難所に移った。日中は自宅、夜は避難所で過ごす。

     避難所では飲み水が手に入り、炊き出しもある。乳児用のウエットティッシュやオムツといった支援物資も届いている。通電の再開でインターネットも使えるようになったが、大きな妨げになっているのが断水だ。「何をするにも水が必要。自宅に水がずっと届かないならば、この先どうしたらいいのか」と表情を曇らせる。

     町内には新旧の浄水場が3カ所あるが、今年7月に稼働したばかりの北部にある新浄水場は地震による土砂崩れで大きく壊れ、南部の浄水場も水道管から水が噴き出して役割を果たしていない。いずれも復旧のめどが立たず、7月まで使っていた旧浄水場も再稼働までに少なくとも1カ月以上はかかる。「これまでに経験したことのない被害」(町建設部の佐藤義彦参事)を受け、町は町内3カ所に設けている給水所を10倍に増やす。【岡崎英遠】

    断水復旧には1カ月かかる 厚真町長会見

     厚真町の宮坂尚市朗町長が、地震後初の記者会見を町内で開き、「遠くて困難な道のりだが、町民が一丸となって確実な復興の歩みを進めたい」と話した。断水の復旧見通しでは、被災した浄水場の大規模改修が必要となることから「1カ月はゆうにかかる」とした。

     町民の応急仮設住宅の入居については、希望者の調査を実施。公共住宅や民間住宅を活用し、不足分の仮設住宅を町有地に建設する。入居時期は「月内を目標に進めたい」とした。町によると現在、町民約50世帯が入居を希望しており、約130戸の建設を週内をめどに道に申請する。

     宮坂町長は「過去の経験値から(厚真町は)土砂災害に強いという認識を持っていたので信じられない。これだけ大きな地震に見舞われることは想定していなかった」と話した。【安達恒太郎】

    安平の基幹 酪農に打撃

     約2900世帯が断水している安平町では、基幹産業の酪農が打撃を受けている。水道の復旧は市街地など一部にとどまり、牧場がある周辺部では断水が続く。地元農協によると10日現在、町内の農家20戸のうち、5戸が乳牛の飲み水や搾乳機を洗浄する水の確保が難しく、生乳を出荷できていない。

     水道が使えなくなった小華和(こはなわ)牧場。乳牛約60頭を育てている小華和寛紀さん(30)は「生き物なので水は絶対必要。隣の農家から地下水をわけてもらってしのいだ」と語る。

     地元農協によると、地下水をくみ上げるポンプがない牧場では、農家が自ら浄水場に水をくみに行ったり、農協が運送会社に手配して集乳車のタンクに水を入れてきてもらったりして、乳牛の飲み水を確保している。

     しかし、搾乳機やホース、タンクを洗浄する分量までは確保できず、搾乳した生乳は廃棄せざるを得ない状況だ。

     小華和牧場では地震直後の停電の影響で、出荷先が生乳を受け入れられず、5トン約50万円分を廃棄した。小華和さんは「牛は家族のような存在。できる限り守ってあげたい」と話した。【土江洋範】

    ボランティア受け入れ開始

     停電の解消などに伴い、北海道内のボランティア受け入れが10日、始まった。厚真町やむかわ町でボランティアセンターが開設され、安平町では屋内清掃などの活動が始まった。

     これまで多数の申し出や問い合わせがあったが、受け入れ準備が整わず、混乱回避のため自粛を呼びかけていた。神戸市の50代女性は「阪神大震災で支援を受けた恩返しをしたい。子どもが楽しく過ごせるよう手伝いたい」と語った。福祉車両を持参した障害者支援団体なども登録した。【阿部義正】


    地酒「美苫」を支える 最後の不明者 山本さん

     山本辰幸さんは10日未明、雨が降り続く捜索現場で発見された。妻リツ子さん(77)と長女ひろみさん(50)も地震の犠牲になった。知人らによると、山本さん一家は長男のみが土砂から逃れて無事だったという。近所の男性(80)は「3人も犠牲になり、慰める言葉がない」と思いやった。

     山本さん宅は、厚真町北部の幌内地区でも最も奥にある。付近は約200メートルにわたって裏山の土砂が田んぼに流れ込んでおり、捜索が難航した。

     山本さんは北海道苫小牧市の地酒「美苫(びせん)」に使われている酒造好適米を栽培していた。「美苫」はフルーティーでキレのある飲み口が人気の日本酒として知られる。同市の酒店「宮永商店」の宮永玲子さん(64)は山本さんと面識はないが、酒米作りの中心的な存在だったことは知っていた。酒を毎年仕入れていた宮永さんは「今年も新米の収穫を楽しみにしていた」と残念がった。

     知人の男性は「農業に熱心なことで知られていた」と話し、山本さんを知る地元の農協職員は「地域にも貢献していた方なので残念だ」と悼んだ。【岸川弘明、片平知宏】

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