メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

北海道地震

厚真愛した課長、犠牲 定年引き留められ、まちづくり

地震で亡くなった厚真町役場職員の中川信行さんの机に手向けられた花=同町役場で2018年9月11日、和田大典撮影

 最大震度7の地震に襲われ、36人の犠牲者を出した北海道厚真町。住民人口34人のうち19人が犠牲になった吉野地区では、町政を支えてきた町理事兼まちづくり推進課長の中川信行さん(62)と妻久美子さん(58)が命を落とした。町役場の同僚は早すぎる死にショックを隠せないが、中川さんへの思いを胸に町の再建に取り組む。【畠山嵩】

    中川信行さん=本人のフェイスブックから

     窓から日が差し込む町役場1階。机には花を生けた花瓶が置かれていた。「まちづくり推進課長」の名札は置かれたままだが、主はもういない。部下だった同課主査、江川允典さん(38)は「『疲れてきたら早く帰れ』と気遣ってくれる優しい上司だった」と目を赤くした。

     中川さんは東京農業大を卒業後、1979年に町役場に入った。農業畑を歩んだ後、まちづくりに長年関わった。町の魅力を高めて人口減に歯止めをかけようと、農業体験ができるグリーンツーリズムを推し進め、移住・定住に力を入れた。ここ数年、町外からの転入者は年間で20人ほど。江川さんは「中川さんが中心となってつくった政策が貢献していた」と話す。

     60歳で定年退職するはずだったが、町は理事職を新しく設けて引き留めた。中川さんはまちづくり推進課長を兼ねる形で現場にとどまった。

     町中心部の町営団地に住んでいたが、母親が亡くなったことをきっかけに2017年春、妻の実家がある吉野地区に転居。ついの住み家に選んだ地であの日、地震による土砂崩れにのみ込まれた。

     「中川さんを失い、悔しく悲しい気持ちは当然ある。中川さんが生きていたら『しっかり支援をやれ』と言ったはず。やれることをしっかりやる」。目の前にある課長席を見ながら、江川さんは表情を引き締めた。

    親孝行だった「まーちゃん」 隣家のいとこ悲しみ

     土砂崩れで亡くなった厚真町富里の農業、佐藤正芳さん(65)。隣に住むいとこの佐藤泰夫さん(63)は年が近いこともあって、子どもの頃は一緒に山で桑の実をとったりして遊ぶなど兄弟のように育った。

     泰夫さんは6日午前3時過ぎ、グラグラという地震の揺れで目が覚めた。暗がりの中、2階の窓を開けると、木や土砂が家の近くを滑り落ちる様子が見えた。家の中でもテレビやタンスが倒れ、電気も付かなかった。「大変なことが起こっている」と感じた。

     明るくなるのを待って外に出た。隣にあるはずの2階建ての家がない。周囲は土砂だらけで、正芳さん方の屋根だけが見えていた。「まーちゃーん、まーちゃーん」。必死に呼びかけたが、返事はない。その日から昼も夜も、泰夫さんは捜索を見守り続けた。8日、正芳さんの遺体が発見された。

     正芳さんは10年ほど前に母親が亡くなるまで、農作業を終えると福祉施設に毎晩行き、母親に夕飯を食べさせていた。「あの親孝行はまねできないな」とみんなが話すほどだった。「まじめで一直線で、面倒見の良いやつだった」。泰夫さんは正芳さんの人柄をしのんだ。【片平知宏】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 福岡 大濠公園の池、元福岡銀頭取死亡 事故と事件で捜査
    2. 日本テレビ イッテQ疑惑で大久保社長謝罪 祭り企画休止
    3. 日本テレビ イッテQやらせ疑惑で不適切演出認める
    4. 中央防災会議 南海トラフ前兆 M8級「半割れ」で要避難
    5. キスマイ宮田俊哉 風間俊介の兄役で「やすらぎの刻~道」出演 短髪姿にメンバーは「アリだね!」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです