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論点

日本防衛のあり方

 政府は年末、防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直し、新たな大綱に沿って中期防衛力整備計画(中期防)を策定する。米国は対日赤字解消のため、高額な防衛装備品の購入を日本に迫っており、自民党も防衛費の大幅拡充を提言した。厳しい財政状況の下、何をどんな目的でどれだけ計上するのか、防衛装備品も「聖域」ではない。

    「イージス・アショア」必要 若宮健嗣・自民党国防部会長

     2019年度予算の概算要求に導入費が計上された陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は、北朝鮮の核・ミサイル開発が新たな段階に突入したことを踏まえて必要とされる防衛力の拡充の一環だ。防衛大綱の見直しに向けた5月の党の提言に盛り込んだ。北朝鮮は私が昨夏まで約2年副防衛相を務めた間に約40発のミサイルを撃った。時間帯、軌道、発射数ともさまざまで、24時間365日態勢だった。そのような脅威に対処するには、迎撃ミサイルを発射できる海上自衛隊イージス艦を日本海上に待機させるだけでは限界がある。艦船が交代する間、穴をあけないために予備の艦船が必要だし、冬季は悪天候が多く、非常に厳しい環境だ。

     イージス・アショアを導入すれば、2基で日本全土をカバーできる上、ミサイル防衛に充てている海自艦船を東シナ海、南西地域など他の海域に振り向けることもできる。中国の海洋進出は依然として活発なことを考えれば、防衛力のより効率的な配分といえる。トランプ米政権誕生の前からミサイル防衛の配備を検討してきており、「お買い物しなさい」と言われて決めたわけではない。導入費は決して安くはないが、イージス・アショアほどの迎撃能力を持つ装備は他にないし、限られた基数しか製造できないので、ある程度の額は致し方ないのではないか。日米同盟は世界でもまれに見る強固な同盟関係であり、日本への導入というのは自然な流れだと思う。

     防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)が対国内総生産(GDP)比2%達成を目標としていることを参考にしつつ、必要かつ十分な予算を確保すべきだと考えている。GDP比1%を超えるかどうかということは、もうそれほど気にすべきではない。防衛費に限らず、最近想定を超える自然災害が相次いでいることも踏まえて、国民が安全に暮らせる状況を作ることができるよう、最適で有効な形で予算の割り振りをすべきだ。

     防衛生産・技術基盤の維持・強化も重要だ。軍拡競争がエスカレートするのは避けた方がいいが、相手が相当に高性能、高機能な装備を持つことが明らかならば、手をこまねいて待っているわけにはいかない。防衛装備協力をする上でも、それなりの技術力を持っていないと、日本が主導的に開発を進められず、対等な装備品開発とはならない。自動車産業と同じように防衛分野も国際競争力を高めれば、産業発展にもつながる。

     私が最も重視しているのは「ソフトな安全保障ネットワーク」だ。副防衛相時代に南スーダンを視察した際、カンボジア軍の司令官と女性隊員から1992年の自衛隊によるカンボジア国連平和維持活動(PKO)への感謝の言葉をいただいたのが忘れられない。PKOをはじめ能力構築支援、装備品開発などを通じ、できるだけ多くの国々との良い関係を築き上げ、日本は信頼できるパートナーだと確信してもらうことが、究極の国際貢献であり恒久平和に近づく道ではないか。【聞き手・上野央絵】

    米国任せの整備危うい 渡辺周・元副防衛相

     米朝対話により、朝鮮半島を含む北東アジア情勢が変化する一方で、安全保障政策を巡る国会の論戦はほとんど深まっていない。衆院の安全保障委員会は、与野党が合意しないと開かれないし、政府側は野党の質問に対し「詳細については答弁を差し控える」と答弁する。議員事務所に政府の職員を呼べば、説明には来るけれど、「事柄の性質上、お答えを差し控えたい」と繰り返す。安保政策は専門用語も多く、国民からすれば縁遠い部分もある。だからこそ、国会での議論が求められるのに、十分な説明がないまま、政府はどんどん事業を進めている。

     安倍政権になり防衛費は過去最大を更新し、「なし崩し」状態といっていい。2019年度予算編成に向け、防衛省の概算要求では陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の整備費として、2352億円が計上された。陸上イージスはどんな性能があり、何ができるのか。巨額の予算を使おうとしているのに、これまで政府側から国会できちんとした説明はなかった。配備まで6年かかるともいわれていて、日本を取り巻く今後の安保環境の分析を含め、もっと深掘りの議論をすべきだ。

     昨年12月の衆院安保委員会で、米国の有償軍事援助(FMS)による装備品購入の是非について取り上げた。FMSは米国の武器輸出管理法に基づき、同盟国や友好国に最新鋭の装備品を有償で提供する契約だ。米国側の提示する価格見積もりや提供時期を受け入れなければいけない。米国の都合で契約解除もでき、会計検査院からは納入された装備品の不具合なども指摘されている。私が「隷属的な契約」と批判したのに対し、小野寺五典防衛相は「透明性の確保を含め、さまざまな改善点がある」と答弁した。陸上イージスにもFMSでの契約があり、現行の契約制度の見直しが必要だ。

     そもそも、陸上イージスは、米国に飛んでいくミサイルについても、日米共同で防衛する側面がある。本当に日米関係が大事というのなら、契約の積算根拠を示してもらうのはもちろん、日本の国内産業を育成するため、装備品も共同開発すればいい。防衛装備品の整備から修理まで全て米国に任せていると、結局、安全保障面でコントロールされてしまう。米国のトランプ大統領は安保政策ではなく、対日貿易赤字を解消するための通商政策として装備品購入を迫っており、米国に言われるままの防衛力整備は危うい。

     政府が年末に改定する防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)に向け、自民党は「国内総生産(GDP)の2%」を視野に防衛費増額を求めている。しかし、どこまで具体的に積み上げた数字なのか、疑問が残る。米朝対話は実現したものの、北朝鮮は金正恩朝鮮労働党委員長による独裁国家であり、いつひょう変するか分からない。中国も活発な海洋進出を続けており、アジア情勢は依然、不透明で予測不能だ。複雑な安保環境を国民に理解してもらうためにも、防衛力整備を含めた安保政策について透明性のある国会論戦が求められる。【聞き手・中村篤志】

    自衛隊の役割見直しを 佐道明広・中京大教授

     日本の安全保障環境は、中国の海洋進出、朝鮮半島情勢など厳しい現状で、防衛費が多少増えるのはやむを得ない。ただ、少子高齢化の中で社会保障費は増大し続け、財政赤字も考えると、大幅な増額は見込めず、国内総生産(GDP)比1・2%がせいぜいだろう。限られた財源の中で、長期的な視点から本当に必要なものは何か、有効な予算の使い方か、政府は国民に対して明確に説明すべきだ。しかしそれがないまま、自衛隊の役割は冷戦終了以降、国連平和維持活動(PKO)、対テロ、イラク戦争などの日米防衛協力と、拡大の一途をたどっている。

     加えて最近は、東日本大震災、西日本豪雨など自然災害への対応で、自衛隊に対する国民の期待がかつてなく高まっている。しかし組織の実態は、少子高齢化で隊員数が減少傾向の中、災害対応を主に担う陸上自衛隊は効率化の名の下に人員も予算も減らされ、一方で高額の装備購入で防衛予算は増え続けている。自衛隊が拡大する任務の中で、何をどこまでやるべき組織なのか、根本的に問い直す時期にきているのではないか。

     日本の現在の繁栄は、第二次世界大戦後に米国が主導して築いてきたリベラルな国際秩序の恩恵によるところが大きいが、日米安保体制の下で安全保障を米国任せにし、本格的な議論をしてこなかった。しかし今や米国は率先して自ら築いた秩序を壊しており、トランプ大統領は日本に相談なくアジアでの米軍のプレゼンスを大幅に後退させるかもしれない。日米安保は重要だが、それだけに頼らない独自の安全保障戦略が必要だ。

     「米国任せの日本」の縮小版が「沖縄任せの本土」、沖縄の米軍基地問題だ。1950年代には本土の方が多くの割合を占めていた米軍基地が、沖縄返還を機に逆転して沖縄に過重な負担となり、本土は日米安保の痛みの部分を実感せずにきた。在沖米軍基地は日米安保に欠かせぬ存在であり、自衛隊の役割の見直しに当たっては沖縄の問題を含めた再検討が必要だ。

     例えば、陸自が米国から購入する垂直離着陸輸送機オスプレイは、沖縄県・尖閣諸島など南西諸島を守るため相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に新設した「日本版海兵隊」と称される水陸機動団の移動手段として佐賀空港に配備されるという。しかし一案だが、水陸機動団は沖縄に配備した方が「尖閣は日本が守る」と示せるのではないか。相浦には沖縄の米海兵隊を移す。もともと米海兵隊の移動手段である強襲揚陸艦は佐世保が母港だ。そうすればオスプレイも、米海兵隊の拠点として沖縄県内に計画中の普天間代替施設も、要らなくなるかもしれない。

     政府は専門家などを集めて自衛隊の役割を徹底的に洗い直して案を作り、全国でタウンミーティングを開催して国民に提案してはどうか。野党は法律問題の揚げ足取りに終始せず、自衛隊幹部をどんどん国会に呼んで徹底的に現場に即した議論を展開する。国の安全をどう守っていくかを考えるのは政治の最大の課題であり、それこそが政治家の仕事ではないか。【聞き手・上野央絵】


    サイバー対応など焦点

     「防衛計画の大綱」(防衛大綱)は向こう10年間の日本の防衛政策の基本方針で、見直しは2013年以来5年ぶりになる。前回の改定では中国の軍事的台頭を踏まえ、陸海空3自衛隊の一体的運用を進め、離島防衛を強化。今回はサイバー分野など新たな領域への対応が焦点になる。防衛大綱と合わせて策定される「中期防衛力整備計画」(中期防)は今後5年間で、自衛隊が配備する艦船や航空機など具体的な整備品と所要経費を明記する。


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     ■人物略歴

    わかみや・けんじ

     1961年生まれ。慶応大卒。大手流通グループ代表秘書を経て2005年衆院議員初当選。防衛政務官、副防衛相・副内閣相を経て現職。防衛大綱の見直しに向けた党の提言をまとめた。


     ■人物略歴

    わたなべ・しゅう

     1961年生まれ。早稲田大政治経済学部卒。96年に衆院議員初当選、当選8回。旧民主党政権で副総務相、副防衛相などを経て、現在、国民民主党副代表、党外交・安全保障調査会長。


     ■人物略歴

    さどう・あきひろ

     1958年福岡県生まれ。学習院大卒。博士(政治学)。政策研究大学院大助教授などを経て現在、中京大総合政策学部教授。専門は日本政治外交史。著書に「自衛隊史」など。

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