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[レポート]日本代表を追いかけてジャカルタへ――。『ウイイレ』は紛れもなく“スポーツ”だった

情報提供:サッカーキング

 
『ウイニングイレブン2018』の日本代表としてアジア競技大会(ジャカルタ)に臨んだ杉村直紀(SOFIA)選手と相原翼(レバ)選手の2人が、見事に金メダルを獲得した。

 杉村選手を初めて見たのは今年1月。JFAハウスで行われたeスポーツ世界選手権『PES LEAGUE WORLD TOUR 2018 アジアラウンド』が最初だった。その時も各国の強者相手に堂々と渡り合い、ベスト4という好成績を残したが、当時はまだ「大人しそうな青年だな」という印象しかなかった。しかし、のちに本人が「自分が変わるターニングポイントになった」と語る『PES LEAGUE WORLD TOUR 2018 ヨーロッパラウンド』で世界王者に輝くと、印象はガラリと変わる。5月下旬に行われた日本代表選考会では王者の風格を漂わせ、圧倒的な強さで代表の切符をつかんだ。

 一方の相原選手は上述の日本代表選考会で見たのが最初。予選では次々と強敵を破ってファイナルへ駒を進めたが、あまりにも淡々とプレーしているように見えたから、17歳(当時)という年齢を聞いたときは少し驚いた。翌日、代表決定戦を制し、表彰台で年相応のはにかんだ笑顔見せたときは、ちょっと安心したぐらいだ。

 日本代表としてチームを組むことになった杉村選手と相原選手は、6月にアジア競技大会の出場権をかけた東アジア地域予選を戦い、全勝で本戦出場を確定させた。と同時に、僕のジャカルタ行きも決定し、2人への本格的な取材がスタートした。

 取材を通じて驚かされたのは、2人のプロフェッショナルな姿勢だ。「代表選考会で負けた人たちの分も、僕たちは頑張らなければいけない」(杉村選手)、「この大会は注目度も高く、ウイニングイレブンやeスポーツを知ってもらうためのチャンスになる」(相原選手)。ゲームをスポーツと捉えることに違和感を覚える人はまだ少なくない。しかし2人のこうした考え方は、他の種目でアジア競技大会に出場した選手たちと何ら変わらないものだろう。

 もう一つ印象に残ったのは、東アジア地域予選での戦い方だ。データだけ見れば4戦全勝(8ゲーム全勝)という圧倒的な勝利に見えるが、この予選には本大会での金メダル獲得につながるエピソードがある。

 5カ国総当たりで行われた同予選は1vs1による第1ゲーム、2vs2による第2ゲーム、1vs1による第3ゲームのBO3形式(2ゲーム先取)が採用されたが、日本代表は当初、年上で実績でも上回る杉村選手(21歳)がすべての第1ゲームを担当する予定だった。しかし、本大会に向けて「経験を積んでほしい」と考えた杉村選手は韓国との第2戦で急きょ、第1ゲームを相原選手に託す決断をする。

 いきなり回ってきた出番に「本当に驚いた」という相原選手は、緊張もあってか前半だけでまさかの3失点。それでもそこから驚異的な巻き返しを見せ、PK戦の末に勝利を収めた。もしこのゲームを落としていたら、そのままズルズルと負けが込んでいた可能性もあった。だが杉村選手は「リスクよりも経験してほしいという気持ちのほうが強かった。勝てると信じていましたし、仮に負けても第2、第3ゲームで取り返せますからね」と強気だった。結果として相原選手は大きな経験を手にし、本大会での活躍へとつながっていく。

 2人の快進撃は本大会でも続いた。開催国インドネシアとの初戦は杉村選手が貫禄の試合運びで第1ゲームを制すと、2vs2でも危なげなく勝って白星スタート。迎えたベトナムとの第2戦では、第1ゲームに登場した相原選手が前半終了時点で3点のビハインドを背負いながらも、終わってみれば5-3の大逆転勝利。まさに“あの韓国戦”と同じ展開だった。

 この勝利で勢いに乗った日本は無傷のままグループステージを突破。準決勝でも粘る相手を振り切り、決勝へと駒を進めた。金メダルをかけて激突するのはイラン。大一番の第1ゲームでコントローラーを握ったのは杉村選手だった。しかし……。

 予選からここまで6ゲームで一度も敗れたことのなかった日本のエースが、この第1ゲームを1-3で落としてしまう。後がない状態で迎えた第2ゲームの2vs2ではしっかりと気持ちを切り替えて快勝。そして運命は相原選手に託されることになった。

 会場内にピリピリと張り詰める緊張感。間違いなくこれまでの試合とは異なる雰囲気の中、最終戦がキックオフを迎えた。試合はイランが先制し、スタンドのイランサポーターが歓喜に湧くが、ここで相原選手の経験が生きる。雰囲気に飲み込まれてもおかしくない状況ですぐさま同点に追いつくと、後半に入って逆転に成功する。その後、粘る相手に追いつかれるが、主導権を渡すことなく、終盤に待望の3点目。大きなガッツポーズを繰り出し、ユニフォームの袖に刺繍された日本国旗を強く握りしめる相原選手、その姿に大歓声を送るスタンドのファン……その光景は紛れもなく“スポーツ”だった。





 試合は3-2でタイムアップ。この瞬間、アジア競技大会のeスポーツ部門で日本人初の金メダリストが誕生した。「会場でコールが起こっていて、国と国が戦っているということを実感しました。本当にやりがいを感じました」。これまで世界大会を経験している杉村選手にとっても、やはり日の丸を背負っての戦いは格別だったようだ。表彰式では日本国旗が一番高いところに掲げられ、『君が代』が流れた。僕が思わず涙を流しそうになったその景色を、相原選手は「一生忘れられない」と振り返る。計り知れないプレッシャーに打ち勝ち、結果を残した彼らへの、最高のご褒美だった。

 今回の2人の活躍によってeスポーツとウイニングイレブンはこれまでにない注目を集めた。「これからもっとプレー人口を増やして、コミュニティを広げていきたい」と相原選手が言うように、まだまだ発展途上の競技ではあるが、4年後のアジア競技大会では正式競技(今大会はデモンストレーション競技)としての採用が決定、2024年パリ五輪での正式競技化が検討されるなど、急速に盛り上がっている。今後、日本でも大小様々な大会が開催されていくだろう。

 ゲームはスポーツなのか――。そんな疑問や違和感を抱いている人はぜひ、直接eスポーツに触れてみてほしい。きっと考えが変わるはずだ。

取材・文=本間慎吾

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