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余録

ある時、道元禅師は弟子に貪欲を戒めて言った…

 ある時、道元禅師(どうげんぜんじ)は弟子に貪欲(どんよく)を戒めて言った。「人々みな食分(じきぶん)あり、命(みょう)分(ぶん)あり」。食分は人が一生に食べる物の総量、命分は寿命の長さ。それらはあらかじめ決まっているから、より多く求めてもむだだという▲--ある僧があの世へ行くと閻魔(えんま)大王が「こいつはまだ命分があるから帰せ」と言う。すると冥界(めいかい)の役人は「命分はあるが、食分が尽きている」。大王は「ならばハスの葉を食べさせよ」。生き返った僧はハスの葉で余命をつないだ▲要は「衣食をむさぼるなかれ」だという。人の寿命を食べる総量で表すのは中国から来た発想らしい。ならば日々の食を減らすとその分長生きする計算だが……。先日発表された国民健康・栄養調査の摂取カロリー調査を見てみよう▲世代別調査によれば、20代以上で1日の摂取カロリーの最も多いのは男女とも60代だった。20年前の調査では60代は男女とも20~50代のどの年代より少なかった。それが今では枯淡(こたん)どころか、若い人よりも食欲の旺盛(おうせい)な60代となった▲だが実はその60代も20年前に比べると摂取カロリーは減っている。50代以下はその減り方が大きく、20~40代は減少幅が1割前後に達しているのだ。背景として、健康志向によりカロリーを気にする人が増えたことが指摘されている▲むろん女性のやせすぎなど、非健康的な現象も見逃せない。ただ摂取カロリーの減少とこの間の平均寿命の延びは、食分=命分という昔の人の見方を思い出させる。教訓はやはり「むさぼるなかれ」だ。

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