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沼野充義・評 『モラルの話』=J・M・クッツェー著、くぼたのぞみ訳

 (人文書院・2484円)

文学に何ができるか

 南アフリカ出身のノーベル文学賞作家、クッツェーの最新短編集である。比較的短い七編から構成されるコンパクトな作りの本。しかし、それにしても「モラルの話」というタイトルを、ずばり直球で投げかけてくる剛直さは、いまどき稀(まれ)ではないか。

 もちろん、単純な道徳的教訓を引き出せるような作品集ではなく、文学的な企(たくら)みに満ちたものばかりである。最初のごく短い「犬」は、「猛犬」に吠(ほ)えられて恐怖心を抑えられなくなる女性の話で、あっという間に読み終えていったい何のことかと怪訝(けげん)にさえ思うのだが、本の全体を読んでから立ち返ってみると、人間と動物の関係、理性では制御できない情動、共感と暴力といった、本書全体を貫くモチーフが埋め込まれていることに気付く。次の「物語」は、束(つか)の間の不倫を楽しみながら、まったくやましさを感じず、幸せな結婚生活を続ける女性の話。

 そして三つ目の「虚栄」以降の五編は、以前のクッツェー作品にも登場するエリザベス・コステロという架空…

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