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社説

ノーベル医学賞に本庶氏 がん治療の新地平開いた

 今年のノーベル医学生理学賞が京都大の本庶佑(ほんじょたすく)博士と米国のジェームズ・アリソン博士に贈られることが決まった。本庶氏は新しいタイプの抗がん剤「オプジーボ」の開発につながる基礎研究が評価された。

     日本人の2人に1人ががんにかかる時代、従来と作用メカニズムが異なる革新的な抗がん剤の登場は人々に希望を与える。その基礎を作った功績は大きく、日本人の貢献を喜びたい。

     がんの治療法では外科、抗がん剤、放射線の他に、がん細胞を攻撃する免疫の利用が研究されてきたが、顕著な効果が上がらなかった。

     そこに登場したのが今回の授賞対象となった新しい戦略だ。1990年代、免疫にブレーキをかける分子を研究していたアリソン氏は、ブレーキを外すことで効果的にがんを攻撃できると思いついた。

     本庶氏はこれとは異なる仕組みで免疫の働きにブレーキをかける別の分子を発見。その役割を突きとめた結果が「オプジーボ」の開発につながった。

     こうした新機構の抗がん剤は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、次々と開発が進んだ。対象も当初のメラノーマから肺がんや胃がんなどに広がり、抗がん剤の世界を一新しつつある。

     ただ、忘れてはならないのは、この成果が最初から抗がん剤を開発しようと考えた結果ではないことだ。生命の基本的な働きを解明しようとする四半世紀前の基礎研究が、結果的に抗がん剤につながった。

     しかも、今回の受賞決定は現在の日本の研究の活力を示しているとはいえない。それどころか、最近の日本の科学界は論文数も低迷し、暗雲が漂っているように見える。その背景にあるのは、目先の成果を重視する政府の基盤的な研究費の軽視、行き過ぎた研究投資の「集中と選択」ではないだろうか。

     研究を始める前にその出口を知ることはできず、日本が今後もこうした成果を上げようとするなら、基盤的な研究費を惜しむべきではない。

     日本ではオプジーボが非常に高価だったことから適正な薬価が議論となった。今後、効果も薬価も高い新薬にどう対応していくかも、改めて考えておくべき課題だろう。

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