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記憶つないで

カネミ油症50年/下 救いの手、あまねく 基金つくり安定補償を

カネミ油症の教訓を生かし、食品公害に備えた基金の必要性を提言する宇田和子准教授=東京都中央区で、青木絵美撮影

 「支援を求める被害者を全力で支えるのが私たちの役割だ」。8月27日、東京都内であった市民団体「カネミ油症被害者支援センター(YSC)」の運営委員会。伊勢一郎事務局長はカネミ油症が10月で被害発覚から50年を迎えるのを前に、未認定患者の救済など残された課題の解決に向けて活動していくことを改めて確認した。

 YSCは2002年6月、損害賠償訴訟の訴えを取り下げた患者らが国から仮払金の返還を求められた問題を解決しようと東京で設立された。メンバーは東京の清掃工場建設反対運動を通じて知り合ったダイオキシン問題に関心を持つ市民ら。当時は油症被害の発覚から30年以上が過ぎ、裁判上も和解が成立していたこともあって、多くの人から記憶が消えかけていた。

 水俣病研究の第一人者だった原田正純医師(故人)と、油症患者が集中する長崎県五島市の奈留島(なるしま)などで健康追跡調査をした。体の異常だけでなく、国から求められた仮払金の返還ができずに自殺する人も出ていた。追い詰められた患者へのサポートは待ったなしの状況だった。

 間もなく島の患者たちが被害者の会を結成し、仮払金の返還免除などを求めて国会議員への陳情を本格的に始めた。伊勢さんらは東京で高齢患者らを出迎えると体や足元を支えて付き添い、一緒に国会議員らに対策を求めた。こうした活動が奏功して07年、超党派の特別立法で仮払金の返還免除を盛り込んだ救済特例法が成立。12年には患者に対する初の公的救済を盛り込んだ被害者救済法も成立し、患者と同居していた家族まで認定対象を拡大する道筋もついた。

 しかし、同居家族以外で被害を訴える未認定患者の救済は道半ばだ。伊勢さんは「症状が出ている2世や3世らの救済が、高齢化した患者共通の願いだ」と語り、今後も認定基準の見直しを求めて活動する考えだ。

 食品公害の被害者支援のため国と関連企業で基金を創設するよう提言する声もある。油症被害を研究する宇田和子・高崎経済大准教授(34)は、原因企業による補償金負担を基本としながらも、経営が立ちゆかずに補償が行き詰まった場合には基金で患者を支えることを想定する。

 厚生労働省によると食中毒は全国で毎年約1000件発生しているが、食品衛生法には被害者への公的補償の規定がない。カネミ油症患者は根拠法のない診断基準を基に患者か否かを線引きされ、原因企業が負担する医療費も経営状況に左右されてきた。宇田准教授は「油症は目の前の食品への信頼を壊し、被害者に対する国の救済策が十分ではないことも突きつけた。事故はゼロにはできないという前提に立った対策が必要だ」と話す。(この連載は浅野翔太郎と青木絵美が担当しました)

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