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毎日フォーラム・ファイル

動物の福祉 「アニマルウェルフェア」の食材を

狭いケージから開放された鶏の写真を掲げる岡田千尋さん=東京都渋谷区で

東京オリ・パラ選手村に 市民団体がキャンペーン展開

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、大会期間中に提供される畜産物などの調達基準を、家畜の飼育環境を重視する「アニマルウェルフェア」(動物の福祉、AW)に基づいて生産された食材に徹底するよう、市民団体などがキャンペーンを展開している。海外のアスリートからは「選手村での食事に懸念がある」との声が上がっており、米国の五輪メダリストらが9月、小池百合子・東京都知事と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会あてに要望書を送付した。

     食材の調達基準について改善を求めるのは、米国のドッチィ・バウシュさん(自転車競技、ロンドン五輪・銀メダリスト)、レベッカ・ソニさん(水泳、北京、ロンドン五輪・金メダリスト)ら9人。要望書では「選手の食べるものが競技の結果に直結する。ストレスを与える方法で飼育されたグレードの低い栄養のものでは、それなりの結果しか出せない」と強調し、ケージフリー(平飼い、放し飼い)の鶏が産んだ卵や、妊娠中にストール(拘束)飼育をしていない豚肉などを使うよう訴えている。

    世界に遅れを取る日本

    妊娠ストールに入れられた雌の豚=アニマルライツセンター提供

     日本の養鶏業界では「バタリーケージ」と呼ばれる、足元が金網になった狭いかごの中で鶏を飼育するのが主流だ。NPO法人「アニマルライツセンター」(東京都渋谷区)代表理事の岡田千尋さん(40)は「鶏は本来、地面をつついて餌を食べ、砂浴びをして体の汚れを落とす。雌鶏(めんどり)は巣の中で安心して卵を産みたいという欲求がある」と説明する。

     豚についても「大半の養豚場で繁殖の管理がしやすいということで妊娠ストールを採用している」。母豚は1度のお産で8~15頭ぐらいを産み、生まれた雌の豚は早ければその半年後に雄豚と交配させられ、狭いストールに送られる。出産とその後の授乳期は子豚用のスペースが併設された分娩(ぶんべん)ストールに移されるという。

     海外はどうか。動物保護団体や市民らの運動が実を結び、欧州連合(EU)は12年にバタリーケージを、13年に妊娠豚のストール使用を禁止した。米国では、カリフォルニア、オレゴン、マサチューセッツ州などが双方について禁止を打ち出しており、オーストラリアやニュージーランド、カナダなどでも同様の動きが進んでいる。世界最大手のブラジルの食肉加工業者「JBS」は妊娠豚のストールの段階的廃止を決めた。

    スポーツの祭典を機に改善を

    東京都などに要望書を送付した米国の五輪メダリスト、ドッチィ・バウシュさん=アニマルライツセンター提供

     五輪にも影響した。ロンドン大会(12年)で組織委が定めた基準では鶏卵は放し飼いのもので、豚の飼育では妊娠ストールは禁止。チーズなどの乳製品や魚介類などにも基準を設けた。日本はこのような世界の動きから後れを取っている。

     東京大会の組織委が定める食材の概念には「アニマルウェルフェア」が含まれる。だが、農産物の国際認証規格「グローバルGAP」にはバタリーケージや妊娠ストールの不使用を定めているものの、日本版の「JGAP」にはそれがなく、組織委はJGAPの基準を満たしていれば適合とみなす方針だ。

     日本でも1989年から「平飼い放牧」を実践する山梨県の「黒富士農場」のような生産者はいるが、世界のスタンダード(標準)には及ばない。「家畜の飼育環境が消費者にあまり知られていない。すなわち認知度が不足している」と岡田さんは指摘する。

     新しい流れをつくろうと、北海道の畜産農家や研究者、獣医師らが一昨年、「アニマルウェルフェア畜産協会」を結成し、乳牛について独自の認証制度を設けた。1頭当たりの牛床の面積や子牛をつなぐロープの長さなど、動物・施設・管理の3部門で評価の項目を設け、一定の基準をクリアした農場やその牛乳、乳製品などに認証マークを発行している。生産者では九州の鶏卵生産・販売大手「フュージョン」(宮崎県)が鶏舎の1割に屋内で縦の移動ができる「エイビアリー」方式を導入した。

     アニマルライツセンターの岡田さんや学者らが現在、都オリンピック・パラリンピック準備局と話し合いを始めた。「実態を知れば、日本でも動物の飼育環境の向上を求める声が高まってくると思う。市民が声を上げれば企業が変わる」と岡田さん。「スポーツの祭典である五輪を機にアニマルウェルフェアの普及を進めたい」と言葉に力を込める。

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