働く外国人の受け入れを広げる入管法の改正案が8日、参議院で可決、成立しました。新しい在留資格「特定技能」を設ける仕組みで、来年4月からスタートします。受け入れ拡大に向けては多くの課題が積み残されたままで、法律の改正を急いだ政府の取り組みが問われます。
新たに設けられる在留資格は、二つあります。一つは、一定の知識・経験が必要な仕事につく「特定技能1号」で、通算5年まで日本にいて働けますが、家族を連れてくることはできません。もう一つは、熟練した技能が必要な仕事につく「特定技能2号」で、在留期間を更新して延ばすことができ、家族を連れてこられます。担当する国の役所の組織は、法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げします。
新しい在留資格で受け入れが考えられているのは、介護や農業、建設などの14業種です。政府は今後5年間の受け入れ規模を「最大34万5150人」と見込んでいます。これらの具体的な業種や受け入れの上限の決まりは、法務省が年内に作ります。
日本では子どもの数が少なくなる一方、高齢者が増えてきました。働き手が足りなくなっている経済界の要望を受け、安倍晋三総理大臣が率いる政府、それを支える与党の自民党、公明党は法改正を急ぎました。衆議院と参議院を合わせた法務委員会での審議時間は38時間にとどまり、近年の重要な法案の審議時間を下回りました。野党は「安倍政権は国民にまともな説明ができなくなっている」などと批判しました。
今でも働く環境は厳しく
これまでも日本で技術を身につけて発展途上国へ持ち帰る在留資格として「技能実習生」がありました。この国会の審議を通じ、2015~17年に技能実習生69人が亡くなっていたことが明らかになりました。また、行方の分からなくなった技能実習生に法務省が行った聞き取り調査について、野党が分析したところ、およそ67%の人が最低賃金(雇い主が最低限支払わなければならない賃金)を満たしていませんでした。
役所の窓口が多言語で対応したり、暮らしや住まいを支援したりすることも課題です。主な担い手は市町村ですが、お金やスタッフが必要になることから、「今まで以上に負担が増える」と不安をのぞかせる役所もあります。
新しい在留資格◇
特定技能1号 特定技能2号
必要な条件 一定の技能 熟練した技能
家族の呼び寄せ できない できる
在留期限 通算で5年 更新できる