神田松之丞「慶安太平記」通し講談 うねるドラマ、気迫の語り=評・濱田元子
講談の魅力は連続物。まさにその言葉が腑(ふ)に落ちる。うねるようなドラマ、気迫あふれる語りに揺さぶられる5日間となった。講談界の俊英、神田松之丞が「慶安太平記」全19話の通し口演に挑んだ(A・B日程で計10日間)。
徳川三代将軍家光の死後、慶安4(1651)年に軍学者由井正雪が幕府転覆をくわだてた。「慶安の変」と呼ばれる歴史的事件が題材。文武に秀でた正雪の生い立ちから、策を弄(ろう)して槍術(そうじゅつ)の丸橋忠弥、砲術の牧野兵庫らを仲間に引き入れる過程、壮絶な最期までを描く壮大な読み物だ。
背景にあるのは武断政治によって浪人が急増し、不満渦巻く世情。大悪人といわれた正雪は、果たしてそうな…
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