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河野氏「かなり激しいやり取り」…日露、歴史認識や主権で激突 「6月大筋合意」難しく

河野太郎外相

 河野太郎外相とラブロフ露外相は16日(日本時間17日)、ドイツ・ミュンヘンで平和条約締結に向けた2回目の会談を行ったが、北方領土の主権や歴史認識を巡る溝を埋められなかった。中距離核戦力(INF)全廃条約を巡る米露の対立も、日露交渉に影響しかねない。難題が山積し、6月の大筋合意を目指した日本政府の戦略は練り直しを迫られている。【ミュンヘン光田宗義、モスクワ大前仁】

 「モスクワでは大変歓迎してもらった。その際にもらったカフスはよく使っている」。ミュンヘンにあるロシア総領事館に出向いた河野氏は会談の冒頭、1月の前回会談でラブロフ氏からプレゼントされたカフスボタンを示してみせた。

 続けて「日露の貿易額が伸びている。ロシアから訪日する人も前年比20%以上の伸びだ」と強調。ロシア側が重視する日露の経済分野の進展をアピールした。ラブロフ氏も「大臣との対話を楽しみにしている」と笑顔をみせ、会談は友好ムードで始まった。

 しかし、和やかな雰囲気は約90分間の協議で続かなかったようだ。会談では前回に続き、北方領土の歴史認識や主権を巡り、双方が激しくぶつかった。ラブロフ氏は会談後の記者会見で、北方領土が合法的にロシア領に編入されたとの主張を繰り返した。一方、日本の基本的立場は「北方領土は日本固有の領土で、ロシアに不法占拠された」というもの。河野氏は記者団に、会談でのやり取りは明かさなかったが、「国益を背負っての交渉時にかなり激しいやり取りがある」と述べ、歩み寄りがなかったことを認めた。

 日露両首脳は昨年11月、「平和条約締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言(1956年)を基礎に交渉を加速する方針で合意した。日本政府は歯舞、色丹2島の返還に国後、択捉両島での共同経済活動を組み合わせた「2島返還プラスアルファ」を交渉の軸に据える。歯舞群島と色丹島の引き渡しについて、ロシアと一定の着地点を早期に探ることができると考えたからだ。

 さらに、歴史認識での衝突を避けるため、日本政府は北方領土に対する日本の原則的な立場の表明も極力控えている。ロシア側の軟化を促す狙いだが、ロシアは強硬姿勢を崩さない。河野氏は記者団に「交渉は前にしっかり進んでいる」と強調したが、交渉には停滞ムードが漂う。

 米露の対立も、日露交渉に影を落とし始めている。米国は2月初旬、中距離核戦力(INF)全廃条約からの脱退をロシアに通告し、米露の緊張は高まっている。日本政府が米国から導入する地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」について、ロシアは「攻撃転用も可能で、INF条約違反だ」と批判。日米同盟を結ぶ日本への揺さぶりを強めている。

 日露両首脳は互いの「任期内」での平和条約締結で一致している。ただ、首相の自民党総裁任期が2021年9月までなのに対し、プーチン氏は24年5月まで。任期が長いプーチン氏の方が有利だ。日露外交筋は「日本が焦れば、ロシアに足元をみられる。想定より大きな譲歩を迫られかねない」と危惧する。

 ロシア側の強硬姿勢を前に、安倍政権は当初描いていた「6月のプーチン氏の来日に合わせた大筋合意」の軌道修正に入った。首相は今月12日の国会答弁で「今年という期限を切るつもりはない」と語った。

ラブロフ外相、改めて「第二次大戦の結果を認めることが必然だ」

  「ロシアがクリル諸島全島(千島列島と北方領土)の主権を持つことも含め、第二次大戦の結果を日本が認めることが必然だ」。ラブロフ露外相は16日の会談後の記者会見でロシア側の立場について「皆さんもよくご存じだと思うのだが」と前置きし、条約交渉の「顔合わせ」となった1月の外相会談時と同じく、北方領土を巡る歴史認識の議題を取り上げた。

 プーチン政権は日本との平和条約問題を重要な政治課題として取り組んでいくものの、今年6月までに大筋合意したいという日本のシナリオに同調することはなく、自国の利益を最大限に保障できるまでは歩み寄らない考えとみられる。

 「平和条約交渉は政治日程に左右される問題ではない。戦略的な観点から解決を図らなければならない」。モスクワ国際関係大のスシェンツォフ国際研究センター所長はこう指摘。ロシアとしては▽国際社会における日本との戦略的な関係▽在日米軍がロシアに脅威を与えないという保証▽2国間の経済関係の発展――を見極めたうえで、平和条約締結の是非を判断していくという考え方だ。

 ラブロフ氏が今回も歴史認識の問題を取り上げたのは、国内の幅広い層で領土引き渡しへの反対意見が広がっている点を配慮したとみられる。平和条約交渉が進展していく場合でも、ロシア国民が納得できる結果を得られなければ、引き渡しには応じられないという立場を伝えているとみられる。

 このような強硬姿勢を維持しながら、プーチン政権が平和条約問題に向き合うのは、日本との交渉を進めながら、日本の技術や資本を引き入れたい思いが強いからのようだ。ロシアが2014年3月にウクライナ南部クリミアを編入してから、まもなく5年を迎え、欧米諸国が科した経済制裁が重くのしかかる。実質所得の落ち込みが続いているのが深刻で、今月発表された18年の国内総生産(GDP)速報値は前年比2・3%増だが、「どこまで正確な数値なのかも定かではない」と皮肉る声も聞かれるほど経済は低迷している。

 プーチン大統領側近のペスコフ報道官は1月末に出演したテレビ番組で対日問題に言及。「極東のとても重要なパートナー(日本)と平和条約を結ぶべきだ。我々は(日本からの)投資や技術に関心を持っている」と半ば本音とも言える考えを吐露した。特に欧米との関係が悪化し、中国への過度の依存を避けたいことも、日本への期待が高まる要因だ。

 今後のプーチン政権は腰を据えて日本との交渉を続けながら、折を見て、平和条約の意義を訴えていく方針とみられる。まずはプーチン氏が20日の年次教書演説で平和条約問題に言及するのかが注目される。【モスクワ大前仁】

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