巨額の利益を得ながら税金はわずかしか払っていない。巨大IT(情報技術)企業を巡る不公平な課税の仕組みを変えることが急務だ。
主要20カ国・地域(G20)は今週末の首脳会議で課税の国際ルール見直しを打ち出す見通しだ。国境をまたぐネット販売や広告が活発化し世界経済のデジタル化が進んでいるのに税制が対応できなくなっている。
約100年前に原形が作られた今の課税方式は企業が海外で製品を作って売ることが前提だ。現地の国が課税できるのは、その国にある工場などの利益に限られる。グーグルやアマゾンのように工場がなくても商売できる企業を想定していない。
さらにIT企業が進出先で稼いだ利益を税率が極端に低い国に移し、多額の課税逃れを指摘されるケースも相次いで発覚している。
得られるべき税収が得られない国や、きちんと税金を払ってきた企業が不満を募らせるのは当然だろう。
見直しの一つは、工場などがなくてもIT企業の利用者がいる国が税を徴収できる仕組みにすることだ。もう一つは、各国共通の最低税率を新たに検討することである。
来年中の具体化を目指すが、難航は必至だ。各国の主権に関わり、利害が対立する問題だからだ。
有力IT企業がない英国は現地のネット利用数に応じた課税を主張している。だがIT企業が集中する米国は「狙い撃ち」と反発している。
米国は、ITは自動車産業なども使っていると主張し、課税対象をIT企業以外に広げることを求めている。その場合、市場が大きく、海外企業の工場も多い米国や中国の税収が増える可能性がある。一方、海外展開する有力企業を持つが、人口の少ない国の税収は減りそうだ。
見直しの本来の狙いは不公平な課税の是正である。税収の奪い合いにならない仕組みを検討すべきだ。
最低税率は、低税率で海外企業を誘致してきた国が反発している。だが税率引き下げ競争は各国の財政悪化を招く。歯止めが必要だ。
英国やフランスは既にIT企業への独自の課税強化策を決めた。国際合意が遅れると、独自課税の動きが広がり、混乱が生じかねない。G20は世界経済の大きな構造変化に対し大局的観点から取り組むべきだ。