連載
会社員を経て「ヌードルライター」として活動する山田祐一郎さんの連載です。思い出の麺を、その裏側にある歴史、物語、料理人の愛情まで含めて紹介します。
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こういう店が家の近所にあったらいいのに。最近、ぼくがひかれるのは、そんな店だ。過去には食事のためにわざわざ飛行機に乗った。1人何万円もするコースも食べた。予約困難な店、一期一会の限定麺に高揚した。ただ、1周回って、いや、3周くらい回って、今、そういう気分に少し疲れてきたのかもしれない。
本音を言うなら、できれば予約せずにふらりと寄りたいし、何度も通いたいからそこまで高価な店でないほうがいい。そして、願わくはそういう気の利いた店にふらりと歩いて行きたい。「麺豪(めんごう)のざき」はそんな店だった。
熊本市内の上通アーケードを抜け、さらに北へ歩いて行くと、坪井という昔ながらの風情が残るエリアにたどり着く。ここに店を構えているのが「のざき」。基本的に夜のみの営業で、週末に限り昼も営業するうどんの店だ。店主の野崎光浩さんが元々和食の料理人ということもあり、ただのうどん店ではなく、そば前ならぬ、“うどん前”を楽しめるような酒肴(しゅこう)をそろえており、うどんを食べたい人も、酒を飲みたい人も満足で…
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