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記者が現場を歩き、見て、聞いて、感じながら、ニュースの深層、話題の人々の内面に迫る長編ルポ。

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赤ひげ先生、自ら地域の中へ(その2止) 必要な医療届ける

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東日本大震災で被災した福島県楢葉町の船迫藤子さん(右)を診察する医師の本田徹さん=同町の町営住宅で7月4日、田倉直彦撮影
東日本大震災で被災した福島県楢葉町の船迫藤子さん(右)を診察する医師の本田徹さん=同町の町営住宅で7月4日、田倉直彦撮影

 

 ◆途上国に、ドヤ街に、被災地に

問診で心通わせる

 福島県広野町にある高野(たかの)病院(社本博院長)の医師、本田徹(とおる)さん(72)は、外来や入院患者の診察に加え、近隣に住む高齢者ら約10人の訪問診療をしている。7月初旬、記者も同行して、看護師が運転してくれる軽乗用車に乗り込んだ。本田さんお気に入りのビートルズの曲がかかっていた。スーツにネクタイを着用しているのは、「患者さんに失礼のないように」との配慮からだ。阿武隈(あぶくま)山地の山々と道沿いの木々や田畑が車窓に流れた。

 広野町の長久保敏江さん(77)は、原発事故で県内の避難施設などを転々とした。3年前に戻り、町営住宅で1人で暮らす。避難生活中に心臓の手術をした。糖尿病のほか、肩や腰の痛みもある。「避難中、広野に戻れるか、ずっと不安だった。体調の悪化にも影響したように思う」と長久保さんは言う。本田さんは、長久保さんの肩に手をあて、体の調子を確認した。「不安定な避難生活を続ける中で認知症を発症したり、既往症が悪化し…

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