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詩と音楽を融合させるドイツ・リートの第一人者が、シューベルトからマーラーまでを網羅したコンサートを東京で開く。世界を股に掛け、昨年は旭日小綬章とカナダ・ビクトリア大の名誉博士号を同日に受けた白井光子。磨き抜いたメゾソプラノを白秋の空気に響かせる。
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独カールスルーエ音大などで指導にも当たっているが、楽譜から拍子をつかめない学生が存外に多いのだという。シューベルトとマーラーでは「音と音の間の重さや大きさ」が異なる、と白井。「まずは作曲家それぞれの心音というか、スケールに合わせること。先日、どうしても軽い声が出ない学生に、重い物を持って歌ってもらい、次に軽い物を渡してみたら、シューベルトの声になりました。『間』ということでは休符も重要です。単なる息継ぎではなく、そこに空白が置かれた意味を考えなければ」
声楽の特徴は、音に言語すなわち意味が乗ることだ。独語を独語のまま血肉化しなければリートは歌えない。外国人学生には詩を母語に訳さず、独独辞典を引いて理解するよう指導している。「発音や韻を学ぶのは当然ですが、修辞により単語が省かれていることも多いので、それを補って行間から詩人の念を読み取っていく。例えば『好き』と歌うのでも、思いを上に飛ばすのか下に向けるのか。それを考えて初めてリートになります。歌に…
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