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週刊サラダぼうる・山田祐一郎

会社員を経て「ヌードルライター」として活動する山田祐一郎さんの連載です。思い出の麺を、その裏側にある歴史、物語、料理人の愛情まで含めて紹介します。

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つるつる道をゆく 岐阜のソウルフード

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日本における中華そばの草分けとされる東京・浅草の「来々軒」(現在閉店)の流れをくむ「丸デブ総本店」の一杯。大正時代の味を今も守る=筆者撮影
日本における中華そばの草分けとされる東京・浅草の「来々軒」(現在閉店)の流れをくむ「丸デブ総本店」の一杯。大正時代の味を今も守る=筆者撮影

 大辞林によるとソウルフードとは「アメリカ南部の郷土料理。アフリカ系アメリカ人が奴隷制時代に工夫して作り上げていった料理をルーツにもつ」のだという。加えて「転じて、ある地域やエスニシティー(あるいは個人)にとって、日常の食生活で欠かすことのできない食材や料理のこと。日本人にとっての味噌(みそ)汁など」と記してあった。日本では「転じて――」のほうで頻繁に使われているが、そもそもの意味を踏まえると、みそ汁はちょっと違う気がする。アフリカ人の奴隷、そしてその子孫たちが、貧しい暮らしの中で手に入れられた食料で命をつないだ料理。それを思えば、ソウルフードの要件として「安くて腹いっぱいになる」という点は譲れない。

 「丸デブ総本店」(岐阜市日ノ出町)は大正6(1917)年創業の中華そば店。大衆に根付き、時代とともに進化した今日のラーメンではなく、あくまで当時の中華そばという呼び名、そして在り方を守る老舗だ。メニューは「中華そば」と「わんたん」のみ。どちらも500円で、今年10月の消費増税前までは1杯400円だった。常連客はこれをセットで楽しむのだという。中華そばは全くもって今風ではなく、味を構成する要素は極…

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