特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚

白井聡・評 『追いついた近代 消えた近代 戦後日本の自己像と教育』=苅谷剛彦・著

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 (岩波書店・3630円)

大学入試改革の失態の根源

 大学入試改革をめぐる大失態はついに表に出た。「なぜこんな不条理が?」という困惑が広がっているが、教育業界の内側から見ると、起こるべくして起きたことだ。センター試験を改革して国語・数学に記述式問題を導入する根拠は、「思考力、判断力、表現力」を問う、というものだった。「知識偏重の詰め込みではダメで、考える力や表現する力が大事だ」といった俗耳に入りやすい理屈が「改革」を後押ししてきたのである。

 そもそも、数十万人が受験する、したがって一義的な正答を設定せざるを得ない試験で測定できる「思考力、判断力、表現力」とは、一体何なのか? 底なし沼の思想的混乱がない限り、今次の愚挙はあり得ないのである。本書は、この混乱をその根源に遡(さかのぼ)って解き明かす試みだ。

この記事は有料記事です。

残り1171文字(全文1525文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月