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新型コロナで特措法 「緊急事態」の要件明確に

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 新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に加える法改正を政府が目指している。野党の立憲民主党も成立に協力する考えだ。

 特措法は、感染症の急速なまん延から国民を守り、生活や経済に及ぼす影響を最小にすることが目的だ。

 野党は現行法の解釈でも適用可能と主張したが、政府は「該当しない」と答弁していた。まん延しないように対策を尽くすことが第一だが、最悪の状況に備え法的枠組みを整えておく必要性はあるだろう。

 特措法の中核は、首相が緊急事態宣言を出せることだ。

 宣言すると、都道府県知事は学校や運動施設、映画館などの使用制限を要請・指示できる。臨時の医療施設を設置するために土地の強制使用も可能だ。

 危機管理法制である国民保護法などがモデルで、強い私権の制限を伴う。宣言は慎重に行うべきだ。

 にもかかわらず、宣言発令の要件はあいまいだ。今の特措法では「国民の生命・健康に著しく重大な被害を与えるおそれ」と「全国的かつ急速なまん延で国民生活や経済に甚大な影響」が認められる場合が規定されているにとどまる。

 施行令では、生命・健康への影響は、重篤な症例の発生率が季節性インフルエンザより相当高いかで判断するとされている。「まん延」の定義を含めて法案や施行令に具体的に記すなど、要件をもっと明確にすべきだ。

 実際に判断する際は、宣言の期間や対象地域などについて、感染症の専門家はもちろん、教育や経済など関係者の考えを聞く必要がある。

 宣言が政治的、恣意(しい)的なものになってはならない。この間、首相は全校一斉の休校要請などを唐突に打ち出すなど、場当たり的な対応が目立った。自民党内では感染対策に乗じるように「緊急事態条項」を憲法に加えようという声も上がった。こうした姿勢では、緊急事態の判断を委ねることに懸念が生じる。

 首相は党首会談で野党に協力を求めた。新型肺炎への対応は優先事項だが、「桜を見る会」などの問題は残っている。首相が自ら納得の得られる説明をして、与野党が一体で取り組める環境を整えるべきだ。

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