忖度競争を招いたゆがんだ倫理観 古賀茂明氏に聞く官僚支配の弊害
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安倍政権の特徴の一つが、人事を武器にした強力な官僚支配だ。政権の方針に従わない官僚は冷遇される一方、重用される官僚は「官邸官僚」と呼ばれ、大きな力を持った。その結果、学校法人「森友学園」問題を巡る財務省幹部の国会偽証や文書改ざんに象徴される「忖度(そんたく)」がはびこった。国の屋台骨を支えるはずのエリート官僚集団が骨抜きにされた弊害について、元経済産業省官僚の古賀茂明氏に聞いた。【岡大介/統合デジタル取材センター】
アメとムチで次第に忖度横行
――安倍政権下で、官僚の人事は劇的に変わりました。
◆各省の官僚の任命権については、もともと国家公務員法で各省大臣が持つと明記されていました。ただ、現実には官僚側と政治側でけん制し合い微妙にバランスを保つ中、あまり官僚の意に沿わない人事は行わないという不文律もあった。これを安倍政権は一気に突破しました。そうなると、もともと建前上は政治が人事を決めるとあるだけに、強いです。官僚たちはあっという間に最終防衛ラインを突破されてしまいました。
――典型的なケースは?
◆まず官僚を驚かせたのが、2013年8月の小松一郎駐仏大使(外務省出身)の内閣法制局長官への起用です。法令案の審査などをする内閣法制局の長官は内閣に対しても非常に独立性が高い存在と思われており、霞が関の中でも一目置かれる特別な存在。人格・能力ともに優れた人が内部昇格で選ばれるのが慣例でした。それを、集団的自衛権の解釈変更のために異例の外部起用をした。これで官僚たちは目が点になった。
「これなら次官を代えるなんて朝飯前だ」と背筋が伸びたと思います。「言うことを聞かなければ代えるぞ」という強烈なメッセージになったのです。一方で、よく人事支配の象徴として語られる内閣人事局の設置は14年と、この出来事の後で、象徴的な意味はありますが、言われるほどの影響はなかったと思います。
――その後も、菅義偉官房長官肝いりのふるさと納税導入に反対した総務省幹部の更迭なども起きました。安倍政権は官僚に厳しかった。
◆…
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