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香山リカのココロの万華鏡

精神科医の香山リカさんのコラム。06年から続く長寿連載。診察室から、現代人の“心の病”についての洞察します。

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「おまかせ」も悪くない /東京

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 久しぶりに美容室に行った。長年、通いなれているところだ。いつも同じ髪形にしているが「ちょっと変えてみたいけどどんなスタイルがよいでしょう」と尋ねると、美容師さんは「じゃ、おまかせください!」と元気よく応じてくれたのだ。

 最近、病院では「“おまかせ医療”はやめよう」ということで、とにかくなんでも患者さんに丁寧に説明し、要望をききながらいっしょに治療の方針を決めていく。昔のように「黙って私にまかせなさい」と勝手に検査や治療を進めるのは、もはや時代遅れなのだ。私も、患者さんには検査のデータをなるべく見せながら、薬の効果や副作用を説明し、最終的には患者さん自身に治療の方向性を決めてもらうことが多い。

 しかし、ときには患者さんから、「私にはよくわかりません。先生が決めてください」と言われることもある。そういうときはなるべく、もう一度わかりやすく説明し、「いっしょに決めましょうね」と促すが、心の中では「自分で自分のことをすべて決めるのは、たいへんだろうな」とも思う。もし私が同じ立場でも、きっと同じように「先生が決めて」と言ってしまうのではないだろうか。

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