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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/129 澤田瞳子 画 村田涼平

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 なにせ百済(くだら)の流民が倭(わ)国で売り飛ばした品は、鍋釜だけではない。難波津の市を歩けば、剣や鉾(ほこ)、弓矢といった武具は、流行の釵子(さいし)よりもはるかに安く手に入る。つまり幾ばくかの貯(たくわ)えさえあれば、集めた男たちを武装させることは簡単なのだ。

 法会(ほうえ)の最中だったのか、四半刻ほどして姿を見せた知尊(ちそん)は、全身に抹香の煙をまとわりつかせていた。額田(ぬかた)の言葉に腹をくくった様子で、「わかりました」とうなずいた。

「では私のところには数日のうちに、早く寺を出ろとの四比(しひ)福夫(ふくぶ)さまからの促しが来そうですね。日数がありません。その時は誘われるままに馳(は)せ参じ、隠れ家をこっそり、額田さまにお知らせしましょう」

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