柳原美砂子 毎日新聞 経済部副部長
会社の株式が売り買いされる東京証券取引所(東証)が10月1日、突然ストップして大騒ぎになりました。証券取引所が一日中、止まってしまうのは、先進国では異例のことです。原因は機械の故障ですが、なぜ防げなかったのでしょうか。また、ストップすると何が問題なのでしょうか。
まず、証券取引所とは何かをおさらいしましょう。株式会社は株式を発行し、投資家に買ってもらって事業に必要なお金を集めます。この株式を売り買いできる場所が証券取引所です。会社がもうかってその株式の人気が高まると、株式の値段(株価)は上がり、株式を持っている人(株主)は証券取引所で他の投資家に高く売ってもうけることもできます。
停止の原因となった機械は、故障すると自動的に別の機械に切り替わるはずでしたが、設定にミスがあり、切り替わりませんでした。このため、一日中売り買いができなくなったのです。事前のテストや点検が不十分でした。
東証では1日当たり3兆円もの株式が取引されています。個人だけでなく、銀行や保険会社も客から預かったお金を増やすため取引をしています。東証が突然ストップしたことで、こうした投資家がもうけたり損を減らしたりする機会が失われました。この日に東証で株式を売り出してお金を集めようとしていた会社にも影響が出ました。
深刻なのは、東証が「投資家が安心して取引できる」という信用を落としてしまったことです。日本政府は東証を世界有数の証券取引所にして、世界中から日本にお金を集めたいと考えていますが、今回の停止が冷や水をかけました。
金融庁は23日、問題点を調べるため、東証に立ち入り検査をしました。いつでも安心して取引できるよう、対策が求められます。
経済部で、省庁や銀行、メーカーなどの取材を担当。趣味は散歩や山歩き。学生時代は少林寺拳法をやっていました。1973年福岡県生まれ。好物は、博多では生で食べることが多いサバ。