治療法研究、患者の支えに 梶龍兒・国立病院機構宇多野病院長 ALS嘱託殺人
毎日新聞
2021/1/18 10:24(最終更新 1/18 10:24)
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私は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんを診察しながら治療法の研究を続け、今は難病拠点病院の院長も務めている。ALSと長年向き合ってきたので今回の嘱託殺人事件には衝撃を受けた。女性患者が亡くなる前にできることはなかったのか悔やまれる。
ALSは発症すると数年間で手足をはじめ、呼吸に必要な筋肉がまひし、人工呼吸器を着けなければ死に至る進行性の難病だ。原因は遺伝子の異常など複数考えられており、いずれも最終的には神経細胞が壊れていく。これまでに国内外で100種類以上の薬剤の治験が行われたが、二つを除いて全て失敗してきた。その二つは治療薬として国内承認されているが、病状の進行を遅らせ、平均余命を約90日延ばすといった効果にとどまる。今は有効な治療法がないことが、患者の絶望感につながっている。
私たちの研究チームは、既存薬に用いられるメチルコバラミンという物質を大量に筋肉注射する手法で平均余命を約600日延ばす臨床研究を続け、良い結果が出てきた。海外では一部の遺伝性のALS患者に対する遺伝子治療も、病状の進行を止める効果が期待されている。早期診断、早期治療ができれば大半の日常生活は困らない状態にできる可能性はある。懸命に治療法を研究している人がいて、見捨てられていないと感じてもらうこと…
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