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角田光代・評 『じい散歩』=藤野千夜・著

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『じい散歩』
『じい散歩』

 (双葉社・1760円)

日常を包むやさしさ

 明石新平八十九歳、妻の英子は八十八歳。孝史、建二、雄三の三人息子はみな五十歳前後。都内の一軒家には、孝史と雄三が同居している。新平の毎日はルーティーンで成り立っていて、目覚めると自身で編み出した健康体操をし、自身で考えた健康朝食をとり、新聞を読み、庭や鉢植えの手入れをして、英子に断って散歩にいく。

 健啖(けんたん)家の新平は、散歩の途中、昼食を外ですませ、甘味のみやげを買って、秘密の部屋に立ち寄る。かつて自宅のあった場所に建てた賃貸アパートの一室は、営んでいた明石建設の事務所も兼ねているが、新平が集めたお宝、昭和のエロス関連の雑誌や写真集といったコレクションもここにある。

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