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『孫基禎 帝国日本の朝鮮人メダリスト』=澤宮優

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『孫基禎(ソンギジョン) 帝国日本の朝鮮人メダリスト』
『孫基禎(ソンギジョン) 帝国日本の朝鮮人メダリスト』

 私は高校時代不登校だった。成績も最下層にいると、役に立つ生徒は学校の名誉、業績に利用されることが見えてきた。今夏の五輪を前に、金誠氏による『孫基禎(ソンギジョン) 帝国日本の朝鮮人メダリスト』(中公新書・880円)を読んだ。孫基禎は1936年ベルリン五輪のマラソンで金メダリストになった伝説のランナーである。彼の評伝を読むにつれ、彼がなぜ大会後、国家や政治に翻弄(ほんろう)された人生を送らざるを得なかったのか、啞然(あぜん)とするばかりだった。

 孫の悲劇は、当時大日本帝国統治下の朝鮮半島の出身だった点にある。彼は日本代表として五輪に参加し、日本の悲願であったマラソンでの金メダルを、大会新記録で獲得した。スポーツの栄光は、スポーツの世界にとどまればよいが、そこに政治や資本が絡むと濁りが生じる。

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