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オリンピックは競技を超えて、大会にまつわる景観や生活の変化、後先のドラマが社会的記憶を形作る。前の東京五輪(1964年)を歴史としてしか知らない世代が思い浮かべるのは、例えば新幹線や高速道路、テレビのある日常だ。人によっては、マラソンの銅メダリスト、円谷(つぶらや)幸吉の遺書かもしれない。
「父上様母上様、三日とろろ美味(おい)しうございました。干し柿、もちも美味しうございました」
おいやめいまで親族三十余人に呼びかけ、正月の帰省で味わった古里・福島県の食べ物一つ一つに「美味しうございました」と感謝を連ねた呪文のような手紙はこう結ばれる。
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