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私のことだま漂流記

山田詠美さんが、さまざまな人や言葉との出合いを軸に、作家としての歩みを振り返ります。挿絵はイラストレーターの黒田征太郎さんです。

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私のことだま漂流記

/15 山田詠美 黒田征太郎・え

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前回までのあらすじ

 小学校の最後の数カ月間、山田詠美さんには放課後を一緒に過ごす仲間たちができていた。最後にそれぞれの家で順番にお別れパーティを開き、闇鍋やカルメ焼きを楽しんだ。山田さんの家では、雨戸を閉めきって、レコードで即席のディスコを開設。両親も交えて踊りまくった。

「頭でっかちからの脱出」

 困難から逃げる手段としての読書は、やがて、日常の習慣となった。本を読むことが好き、というよりも、必要だ、と強く思った。私を色々な意味で助けてくれる。屈託なくクラスの子たちの輪に入って行ける性質(たち)ではなかったから、心許(もと)ない気持ちになることもしばしばだったが、ま、いっか、家に帰れば読みかけの本があるし、と自分に言い聞かせた。

 それに、中学に入ってからは、本だけではなく、色々な世界が私の前に広がりつつあったのだった。音楽や絵画などである。

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