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創作の原点

芸術・文化の世界で活躍する著名人の方々に、それぞれの「創作の原点」を聞いた。

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作家・古川日出男さん 小説妄信せず「言葉」の力信じ

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=東京都新宿区で、前田梨里子撮影
=東京都新宿区で、前田梨里子撮影

古川日出男(ふるかわ・ひでお)さん

 作家、古川日出男さん(55)の紡ぐ物語は、スケールの大きさと熱量で読む者を圧倒する。デビュー以来、一貫して小説の可能性を追求してきた作家は今、「小説の弱さに気づいた」と迷いを吐露し、表現者としての岐路に立っていると感じている。

 2020年の夏、東日本大震災と福島第1原発事故の被災地で、故郷でもある福島県内をひたすら歩いた。被災者の体験に耳を傾け、時には自らのことも話した旅は、作家としての原点を見つめる日々になった。私小説的なノンフィクション『ゼロエフ』(講談社)に結実したその旅を経て、「小説を書くのが怖くなった」という。

 「それまで小説には何でも書ける、全てを詰め込めると考えていたんです。でも、現実の大きな力に翻弄(ほんろう)された人たちに会い、小説は万能のツールではないかもしれないと思うようになりました。ならば小説にできることは何だろう、と」

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