- ポスト
- みんなのポストを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
古川日出男(ふるかわ・ひでお)さん
作家、古川日出男さん(55)の紡ぐ物語は、スケールの大きさと熱量で読む者を圧倒する。デビュー以来、一貫して小説の可能性を追求してきた作家は今、「小説の弱さに気づいた」と迷いを吐露し、表現者としての岐路に立っていると感じている。
2020年の夏、東日本大震災と福島第1原発事故の被災地で、故郷でもある福島県内をひたすら歩いた。被災者の体験に耳を傾け、時には自らのことも話した旅は、作家としての原点を見つめる日々になった。私小説的なノンフィクション『ゼロエフ』(講談社)に結実したその旅を経て、「小説を書くのが怖くなった」という。
「それまで小説には何でも書ける、全てを詰め込めると考えていたんです。でも、現実の大きな力に翻弄(ほんろう)された人たちに会い、小説は万能のツールではないかもしれないと思うようになりました。ならば小説にできることは何だろう、と」
この記事は有料記事です。
残り1169文字(全文1564文字)