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3年ぶり来日 実力派・上海クァルテットのベートーヴェン

東京文化会館小ホールで11月17日(写真提供・テレビマンユニオン)

 ニューヨークを拠点に活躍中の上海クァルテットが来日した。

     このクァルテットのメンバーは、ウェイガン・リとイーウェン・ジャン(以上ヴァイオリン)、ホンガン・リ(ヴィオラ)、ニコラス・ツァヴァラス(チェロ)。1983年、リ兄弟を中心に上海音楽院で結成された後、85年にポーツマス(現:ロンドン)国際弦楽四重奏コンクールで第2位を受賞、審査委員だったユーディ・メニューインに高く評価されて渡米した。87年シカゴ新人コンペティションで優勝しニューヨーク・デビューを果たした、30年以上の歴史を誇る実力派である。古典派から現代曲の新作初演も行うなどレパートリーは幅広い。

     現在は「B」が頭文字の作曲家(バルトーク、ベートーヴェン、ブラームス)の全曲演奏会を開く「Bs」と名付けたプロジェクトに取り組んでおり、2014〜15シーズンはベートーヴェンが進行中である。

     11月17日東京文化会館小ホールで披露されたのはベートーヴェンの弦楽四重奏曲で、初期・中期・後期からそれぞれ順に1曲ずつ。

     幕開けの第3番は、明るい柔らかな音色が印象的で、この作品の持つ伸びやかさに身を委ねることができた。音の出だしや終わりはぴたりと合い、ハーモニーの音量バランスは的確で、冷静さがうかがえる。まさに百戦錬磨のクァルテットだと思わせるものだった。

     続いては第11番≪セリオーソ≫。「セリオーソ」とは「厳粛な」という意味を持ち、第3楽章に指示される言葉である。ここではベートーヴェン特有の堅固で重厚な表情が楽しめて、特に第2楽章のツァヴァラスの歌い回しと各パート同士の対話は絶妙で引き込まれる。

     後半は第15番で、ベートーヴェンの晩年に書かれたものだ。作曲の技巧や楽想の豊かさなど、すべてが集約されたこの作品が公演の締めくくりとなる。4人は熟練の技術で自由闊達(かったつ)に、活力に満ちた演奏を繰り広げた。

     アンコールはイーウェン・ジャン編曲の中国民謡より≪羊飼いのうた≫で、穏やかに紡がれた懐かしさを感じる旋律に、彼らがアジア出身のクァルテットであることを再認識させられ、親近感を覚えた。

     ベートーヴェンの弦楽四重奏曲はテクニック面で難しいが、彼らは圧倒的な経験と実力で、3曲とも確立された演奏を聴かせてくれた。このクァルテットは弦楽器ならではの、しなやかで澄んだ響きが特徴的だが、緻密なアンサンブルで描き出す客観的な表現を強く守っているように思える。上海クァルテットにとってベートーヴェンとは記念年や特別なイベントの際には必ずプログラムに入れる特別な存在であり、異なった時期の優れた作品を一晩で聴ける内容に組み上げた今回の公演は、まるで、ベートーヴェンの人生と意志を運んできてくれたかのような幸せな一夜であった。

     次のシーズンには上海クァルテットは結成33周年を迎え、ブラームスにも取り掛かるという。ぜひ日本でも披露してくれることを期待したい。(小港 優里)

    公演日程とプログラム

    ■11月16日(月)19:00 武蔵野市民文化会館・小ホール

    ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番ニ長調 op.18−3

    メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番ヘ短調 op.80

    グリーグ:弦楽四重奏曲 ト短調 op.27

     

    ■11月17日(火)19:00 東京文化会館・小ホール<THE SHANGHAI QUARTET 2015 BEETHOVEN>

    ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番ニ長調

           :弦楽四重奏曲第11番ヘ短調≪セリオーソ≫

           :弦楽四重奏曲第15番イ短調

    ※アンコール イーウェン・ジャン編曲:中国民謡より≪羊飼いのうた≫

     

    ■11月18日(水)19:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール<THE SHANGHAI QUARTET 2015 BEETHOVEN>

    ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番ニ長調

           :弦楽四重奏曲第11番ヘ短調≪セリオーソ≫

           :弦楽四重奏曲第15番イ短調 

     

    ■11月21日(土)14:00 シーハットおおむら・さくらホール<上海クァルテット日本ツアー2015>

    ハイドン:弦楽四重奏曲ニ長調≪ヴェネツィアの競艇≫

    ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番へ短調≪セリオーソ≫

    トゥリーナ:≪闘牛士の祈り≫

    バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント

    (共演:OMURA室内合奏団弦楽アンサンブル)

    筆者プロフィル

     小港優里(こみなと・ゆり) 東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。20世紀以降のオーケストラを研究している。現在一般企業に勤める傍ら、クラシック音楽の取材活動や、子どもたちを対象にした音楽指導やレクチャーなどを行っている。

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