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男女両声ボーカリストが挑むパラレルワールド

マリアセレン

ギリシャ悲劇に能的な物狂いを加えたイタリア語新作オペラ 2月公演

 カウンターテナーとテノールを使い分ける両声ボーカリスト、マリアセレンが、圧倒的な歌唱と能の物狂いを参考にした演技で男女2役を演じるイタリア語新作オペラ「哀しみのシレーナ~禁断の恋~」が、来年2月3~5日、東京・新橋のヤクルトホールで初演される。原作・演出の植村文明は「男と女、愛と憎しみ、現実と幻想を行き来する、セレン独特のパラレルワールドを堪能してほしい」と話している。

 セレンは、182センチの容姿で男女両声を操る歌唱力が注目される異色のボーカリストだ。高校時代に合唱部で歌い、声楽家になろうと音大を目指したが断念。一時就職したもののニューハーフの世界に移り、ショーパブで両声ボーカルに磨きをかけた。その活動からコシノジュンコに見いだされ、コシノのファッションショーにたびたび出演。ファッションショーで「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を歌った動画を2013年11月、ユーチューブにアップしたところ、再生400万回を超える反響を呼んだ。一方で、声楽の夢を捨てきれずにいたところ、植村に出会った。

原作・演出の植村文明

 植村はその類いまれな才能に着目し、「巨大なマリア像のような」容姿と、「ギリシャ神話のセイレーン(美しい歌声で船乗りを惑わす半人半鳥、のちに人魚)のような」両声ボーカルから、マリアセレンと名付けた。セレンには発声法や歌唱法、オペラ用イタリア語発音、能の基本所作を3年間かけてトレーニング。セレンは「歌うための腹筋の使い方や呼吸など、これまで自己流だったと身に染みて感じた。無駄をそぎ落とした能の動きは、まだ発展途上。まるでトレーニングセンターに缶詰めされたような厳しいレッスンだった」と笑う。

 植村は、セレンの魅力を「キラーコンテンツ化して世界に発信する」ために、ギリシャ悲劇に能楽世界の身心変容を加えたイタリア語新作オペラを構想。これまでオペラやクラシックに無縁の若年層も取り込むことを狙い、出演者や大道具を極力簡単にし、オーケストラも25人程度に絞ることで料金を1万円前後に抑える新形態の創作オペラ「イージー・オペラ」を打ち出した。

 「2020年東京五輪の来日観光客も意識し、日本の新しいコンテンツ、100年後のレガシー(遺産)を目指す。アートじゃなくてエンタメ。時代に合わせないと縮小傾向にあるクラシック、オペラのマーケットは広がらない。コンテンツの押し売りでは生き残れない」と、植村は新しい領域に挑む決意を語る。

 物語はギリシャ神話のセイレーンをモチーフとする。互いに憎しみあう人間と人魚との禁断の恋がもたらした「狂いの美学」(植村)を、時に情熱的に、時に悲しみに満ちたアリアで歌い上げ、研ぎ澄まされた演技で表現していく。全5幕で作曲は武井浩之、全編イタリア語だ。セレンは人魚姉妹の三女で人魚国女王のシレーナと、シレーナと恋に落ちる船乗りネレオの男女2役。このほか人魚の長女オンダを三重野広美、次女アズーラを坂本江美、そして舞台回し役の老船乗りを真夏竜が務める。

 第3幕では、禁断の恋と抑えられない恋心のはざまで苦しむシレーナの葛藤を、セレン最大の武器である歌唱をあえて封じ、能の一調をヒントに表現する。オーケストラ演奏もなく、大鼓(おおつづみ)との“一騎打ち”だ。セレンは「情熱的な歌もいいけれど、内に向けてエネルギーを凝縮するような芝居のほうが好き」と手応えも十分。「私しかできないパラレルワールドの世界をぜひ見てほしい」と話す。

 2月3日(金)19時▽4日(土)14時▽同18時▽5日(日)16時――の4公演。全席指定でSS1万3000円、S1万円、A8000円。詳細はマリアセレン公式サイト(https://maria-seiren.com/)で。

能面を手にするマリアセレン

あらすじ

 【第1幕 宿命の出会い】母を人間に殺され復讐(ふくしゅう)の時を狙う人魚シレーナ(マリアセレン)。父の命を人魚に奪われ敵討ちを決意する船乗りネレオ(マリアセレン=二役)。シレーナの誘惑の歌とネレオのおとりの歌が海の上で絡み合い、歌声に引かれあい、魔法にかかったように求愛しあう2人。

 【第2幕 虜囚の女王】船乗りたちのわなで生け捕りにされ、孤島で牢につながれたシレーナ。助けてくれなかったネレオへの恨みと、忘れられぬ思いの間で葛藤の時を過ごす。2人の姉オンダ(三重野広美)とアズーラ(坂本江美)は激しい戦いの末にシレーナを救い出し海底宮殿へと帰って行く。

 【第3幕 恋慕の日々】ネレオへの思いをあきらめきれないシレーナ。姉たちはシレーナの禁断の思いを絶対に許さない。それでも、また会えるのでは……シレーナの未練は募るばかり。

 【第4幕 切れた糸】シレーナに会って許しを請い、もう一度愛の歌を歌いあいたい……。酒浸りの日々を過ごすネレオに、船出のチャンスが訪れた。あらん限りの思いを歌に込めるネレオ。しかし、ネレオの歌声はオンダとアズーラに阻まれ、船は無常にもシレーナの頭上を通り過ぎていく。

 【第5幕 月夜の狂歌】ネレオと引き離されたシレーナは、失意のあまり気が狂い病床に伏せってしまう。オンダは変わり果てたシレーナの姿にショックを受けて心を閉ざし、アズーラはシレーナに代わってネレオへの告白の歌を歌いながら月夜の海をさまよう。ネレオとシレーナの禁断の恋は、すべてを狂わせてしまったのだ。

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