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オーケストラのススメ

~14~ 来年度の日本のオーケストラ……指揮者の異動を中心に

アラン・ギルバート=撮影:堀田力丸

山田治生

 早いものでもう11月。雑誌などでは新年号の制作が行われている。オーケストラも、来年度に向けてのスケジュールが次々と発表になっている。4月からを新年度とするオーケストラの2018年度シーズンのラインアップは出そろったといえよう(ただし9月からシーズンを始めるオーケストラは、まだ来年夏までの予定しか発表していないところがほとんど)。

 この3年ほどで、在京のオーケストラのシェフが大きく入れ替わったが、来年は指揮者の人事異動は少ない。在京オーケストラでの新年度からの新しい顔といえば、東京都交響楽団首席客演指揮者のアラン・ギルバートと、読売日本交響楽団首席客演指揮者の山田和樹があげられる。

 ギルバートは、今年の夏までニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務めていた、世界が注目する指揮者。2019年9月に、NDRエルプ・フィルハーモニー管弦楽団(旧・北ドイツ放送交響楽団)の首席指揮者への就任が決まっている。ギルバートは、1967年、ニューヨーク生まれ。両親がニューヨーク・フィルのヴァイオリン奏者(母親が建部洋子)であり、自らもヴァイオリンを奏で、日本とのつながりも深い。都響とは11年に初共演。7月の就任披露演奏会では、マーラーの交響曲第1番「巨人」とシューベルトの交響曲第2番を取り上げる。また、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、バーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」より“シンフォニック・ダンス”、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」という、アメリカンなプログラムも予定している。12月のストラヴィンスキーの「春の祭典」とシューマンの交響曲第1番「春」を並べたプログラムや、ターニャ・テツラフと都響首席奏者・鈴木学をソリストとしたリヒャルト・シュトラウスの「ドン・キホーテ」も楽しみだ。オーケストラを豊かに鳴らすギルバートが、都響とともに、管弦楽の醍醐味(だいごみ)を満喫させてくれるに違いない。

読響の首席客演指揮者に就任する山田和樹(C)読売日本交響楽団

 山田和樹は、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督とスイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者を兼務するなど、現在、最も国際的に活躍する若手日本人指揮者(1979年生まれ)。日本では、日本フィルハーモニー交響楽団の正指揮者でもあり、読響とは兼務になる。日本フィルと読響とでの活動をどう区別し、どのような違いを見せてくれるのか、興味が持たれる。ただし、山田の読響首席客演指揮者としての登場は、19年1月まで待たなければならない。三つのプログラムが用意され、山田らしい凝った選曲がなされている。山田は、日本人作曲家の作品の紹介に積極的に取り組み、定期演奏会では、諸井三郎の「交響的断章」と藤倉大のピアノ協奏曲第3番(日本初演)を並べる。そのほか、スクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」、レスピーギの「ローマの祭り」、リムスキー・コルサコフの「シェエラザード」など、色彩豊かな作品で、読響と華麗な演奏を繰り広げるであろう。

 札幌交響楽団と仙台フィルハーモニー管弦楽団ではシェフの交代が行われる。

 札幌交響楽団では、スイス出身の名匠、マティアス・バーメルトが首席指揮者に就任する。バーゼル放送交響楽団、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団などのシェフを歴任。NHK交響楽団などにも客演している。札響との初共演は2014年。録音では、演奏機会の少ない作品の紹介での評価が高い。4月の首席指揮者就任記念演奏会では、リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」とモーツァルトの交響曲第29番を披露する。2019年1月の定期演奏会では、ブラームスの交響曲第2番のほか、祖国スイスの作曲家、マルタンの「7つの管楽器、打楽器、弦楽器のための協奏曲」を取り上げる。名誉指揮者ラドミル・エリシュカと現首席指揮者マックス・ポンマーという80歳を超えるベテラン指揮者2人が札響を離れるが、75歳の名匠バーメルトとの新時代が楽しみだ。(編注:エリシュカの札響名誉指揮者の称号は残るが、健康上の理由から今年10月の出演が日本での最終公演となることが発表されている)

 仙台フィルでは、12年間続いたパスカル・ヴェロの時代が終わり、4月からは常任指揮者・飯守泰次郎、レジデント・コンダクター・高関健、指揮者・角田鋼亮の3人体制となる。新国立劇場オペラ部門芸術監督を来年夏に退任する飯守は仙台で新たな指揮活動を展開する。レパートリー的にも、これまでヴェロとともにフランス音楽を中心に取り組んできた仙台フィルが、来年度からは飯守とともにベートーヴェンを中心とするドイツ=オーストリア音楽に力点を置く。飯守のベートーヴェンの交響曲第2番と第3番「英雄」(6月)とシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」(19年2月)、高関のバルトークの「管弦楽のための協奏曲」(18年10月)、角田のシューマンの交響曲第2番(19年3月)などが予定されている。

 また、山形交響楽団では、ホルンの世界的な名手であり、近年は指揮者としての活躍も著しい、ラデク・バボラークが首席客演指揮者に就任する。6月の就任記念演奏会では、モーツァルトやシニガーリャの作品でホルンの吹き振りをするほか、祖国チェコのドヴォルザークの交響曲第7番を取り上げる。ミロシュ・ボクの山響委嘱新作の世界初演も指揮する。

 2018年度は、シルヴァン・カンブルランの読売日本交響楽団常任指揮者としてのラストシーズンとなる。2010年に就任以来、チャレンジングなプログラムに取り組んできたカンブルラン&読響の総決算となるプログラムが組まれている。マーラーの交響曲第9番(4月)、ストラヴィンスキーの「春の祭典」(4月)、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」(9月)、シェーンベルクの「グレの歌」(19年3月)などで締めくくられる。

 ユニークなプログラミングといえば、名古屋フィルの「文豪クラシック」シリーズ。1年を通して定期演奏会で、ドストエフスキー、バイロン、トルストイ、ボードレール、オーデン、ゲーテ、シェイクスピア、メーテルランク、アンデルセン、レム、ニーチェの著作と関係の深い音楽作品が取り上げられる。音楽監督・小泉和裕は、マーラーの交響曲第8番(10月)、シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」(12月)、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」(19年3月)などを指揮する。と同時に、ベートーヴェン・ツィクルスも、小泉、川瀬賢太郎、鈴木秀美の指揮によって、進められていく。なお、小泉は9月に音楽監督を兼務する九州交響楽団でもマーラーの第8番を取り上げる。

 大阪交響楽団のミュージック・アドバイザーであり、事実上のシェフの役割を果たしている外山雄三が来シーズンの最後(19年2月)に自らの新作交響曲を披露するのも注目である。外山は現在86歳。作曲家としての集大成となるであろう新作の初演が待ち遠しい。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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