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アンコール

小山実稚恵の恒例イベント 「ボレロ」のリズムにのせて開催

 小山実稚恵がプロデュースする「こどもの夢ひろばボレロ~つながる・集まる・羽ばたく~」が7月31日と8月1日の2日間、仙台市の日立システムズホールで行われた。夏休み中とあって平日の開催にもかかわらず、筆者が訪れた1日目は多くの子ども連れで大にぎわい。最終的に2日間で3075人が来場し、大人も子どももパスポートを手に、音楽や科学などの多彩なイベントを楽しんだ。

    メインの「ボレロ」大集合コンサート。コンサートチケットを買うとパスポートがもらえ、各種イベントに参加できる仕組みだ

     今年で4回目となるこの催しは、小山の「音楽だけではない世界に触れて感動し、本物を身近に感じてほしい」との思いが詰まっている。メインとなる「ボレロ」のコンサートは1日2回。ほかのイベントは一部を除いてコンサートと時間がかぶらないように配置されており、まずはこの日一つ目の「おもしろサイエンスショー&コンサート」へと向かった。

     サイエンスインストラクターの阿部清人さんがリードするこのイベントでは、さまざまな科学の不思議をひもとく実演が行われた。ドライヤーやブロワー(落ち葉などを吹き飛ばす大型ドライヤーのようなもの)で球面に風を当てると物体が浮き上がり、会場のそこかしこから感嘆の声も。フィナーレではチャイコフスキーの「1812年」がエレクトーンや打楽器で奏でられ、大砲を模して放たれる空気砲に、子どもたちは天井を見上げ歓声を上げていた。実演時には説明も伴い、ひもときへと結びついている。科学の不思議を目の前に、学び、驚き、親子で楽しめる催しだった。

    軽妙なトークと実演が人気の「おもしろサイエンスショー&コンサート」

     予約が必要なイベントもあるものの、当日の参加が可能なイベントも十分多彩な内容だ。「太鼓を叩(たた)こうよ!」のブースでは和太鼓が体験でき、普段触れることのない和太鼓と躍動感のあるリズムを楽しんだ。また「みんなで踊ろう!アロハ~!フラ!」ではフラの魅力が満載。一緒に踊ったりフラで使用されるウリウリやプイリといった楽器に触れたりと、ハワイの文化を学ぶ機会に皆興味津々だった。

     また縄文人にふんすることができるブースもあり、縄文の人々の衣装や装飾品を知る機会にもなった。実は仙台近郊は旧石器時代や縄文時代の遺跡が多く発掘されており、出土した遺跡をそのまま保存、展示する博物館もあるほどだ。古代人にふんする子どもたちをほほ笑ましく見ながら、古代の歴史に思いを巡らせた。

    フラを一緒に踊る出演者と子どもたち

     このほか、お抹茶やトランポリンの体験なども人気を博していた。トランポリンでは子どもたちのみ参加し、大人は周囲で見守るケースが目立った。特にこの日は仙台も猛暑の真っただ中で、外はうだるような暑さのながら、室内で子どもたちが体を動かせるのはありがたい。つかの間の親御さんの休憩に、そんな声が聞こえてきそうな一場面だった。

     さまざまなイベントが行われるが、やはりメインは子どもたちが小山や広上淳一率いるオーケストラと協演する「“ボレロ”大集合コンサート」だ。オーディションで選ばれた子どもたちは小学生から高校生まで年齢も楽器もさまざまで、ピアノの16人は小山と1台4手の連弾を組み、弦や管楽器の10人は東京音楽大学の学生を中心としたオーケストラに加わった。ピアノ連弾とオーケストラがブラームスの「ハンガリー舞曲」やドビュッシーの小組曲集を音色も個性もさまざまに奏でると、ラヴェルの「ボレロ」ではダンサーの竹田理央と合唱の子どもたちが客席の通路に登場。振り付きで「ボレロ」を歌うと、客席の子どもたちも楽しげに体を動かし呼応していた。子どもが子どもの様子に見入り、楽しそうな様子につられて参加する、というのはよくあることで、聴き手側の子どもにとっても、プロの演奏家と子どもの協演はより親しみやすい演出だったろう。またプロとの協演の機会は、選ばれた子どもたちにとっても、かけがえのない経験となったに違いない。

    音楽や楽器への興味を引き出す「みつけた!楽器の正体!」

     特に「ハンガリー舞曲」を演奏した小さなピアニストたちは、7月8日のリハーサルから月末の本番までに急きょ、調を半音上げて仕上げたのだから、こんな得難い経験はそうそうないだろう。リハーサルでは、その場にいた筆者も身がよじれるような音色に違和感を覚えたが、それもそのはず、なんとオーケストラはg-moll(ト短調)、ピアノはfis-moll(嬰=えい=ヘ短調)でそれぞれ弾いていたのだった。これはピアノ原曲とマルティン・シュメリングによるオーケストラ編曲版の調が異なるためだが、聴いていた主催者はさぞ肝を冷やしただろうと思う。しかしそんな中でも小山は子どもたちをよく見ており、リハーサル後、「こちらの用意がいけなかったのですが」と前置きしたうえで、こんなふうに話してくれた。

     「大人だったら弾けません、となるところを、ピアノの子がなんだか粘り腰で。広上さんがオーケストラの譜面を直そうとおっしゃってくださったんですが、できそうな気もしたんですよね。聴くだけでもいいから、まずはオーケストラに演奏してもらうと、ピアノの子もその場で移調をして弾き始めたのです。私は専門の教育を受けましたから、例えば歌手の調子に合わせてその場で半音下げることもできますが、彼女たちはそれを意思と意欲でやってしまうんですよね。あれがあったから私もこどもってすごいなあと、心から思いました」

    オーディションで選ばれた子どもたちと連弾する小山(中央)。指揮は昨年に続き広上淳一

     なぜ、これほどまでに小山は子どもたちとの関わりを大切にしているのか。もともと小山は10年以上前から小学校などをまわり、子どもたちが演奏を聴く機会を作ってきた。近年は東日本大震災の被災地沿岸部を中心に、いまもなお活動を継続している。そこには被災地支援の気持ちと、自身が愛し、“大ファン”である音楽について知ってほしい、またそうした機会をいつの日か思い出し、何かと結びつくことがあれば、という思いが込められている。今年のイベントも、音楽を起点に多様なジャンルのイベントを行うことで、子どもたちが何かを見つけるきっかけになれば、との思いから、「みつける」をテーマに開催された。聴いて、踊って、たたいて、跳ねて、作って、さまざまな体験に目を輝かせていた子どもたちは、それぞれの感性で何を見つけただろうか。筆者として、親として、そんなことを思いつつ、イベント会場をあとにしたのだった。(正木裕美)

    ☆公演データ

    【「こどもの夢ひろば“ボレロ”」―つながる、集まる、羽ばたく―】

    〈ボレロ 大集合コンサート〉

    7月31日(火)、8月1日(水)

    各日11:15開演と14:45開演の2回

    日立システムズホール仙台

    ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

    ドビュッシー:小組曲から「小舟にて」「バレエ」

    ラヴェル:ボレロ(吉川和夫編曲)

    指揮:広上淳一

    ピアノ:小山実稚恵

    管弦楽:こどもの夢ひろばスペシャルオーケストラ

    〈イベント内容〉(抜粋、カッコ内は出演・提供者)

    みつけた!楽器の正体(N響、仙台フィルのメンバー)

    驚きと感動のIT教室―ロボットを動かすプログラミングを体験―(日立システムズ)

    太鼓を叩こうよ!(民族歌舞団ほうねん座)

    みんなで踊ろう!アロハ~!フラ!(フラハラウ フイレフア)ほか

    筆者プロフィル

     正木裕美(まさき・ひろみ) 国立音楽大学(音楽教育学)、同大学院(音楽学)修了。クラシック音楽の総合情報誌「音楽の友」編集部勤務を経て、現在は仙台市在住。「音楽の友」編集部では、全国各地の音楽祭を訪れるなどフットワークを生かした取材に積極的に取り組んだ。東日本大震災発生後、仙台に移り住み、同市を拠点に東北各地の音楽状況や音楽による復興支援活動などの取材に力を入れている。

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