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梅津時比古・特別編集委員の「コンサート」にまつわるエッセー。

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新国立劇場でオペラ2作併演 背後に浮かぶフィレンツェ=梅津時比古

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=寺司正彦撮影
=寺司正彦撮影

 美しい町は毒を含んでいる。

 イタリアのフィレンツェも、メディチ家の富と権力をめぐり町の歴史に争いが絶えない。フィレンツェ最古のベッキオ橋や宮殿には、表から見えないメディチ家の秘密の屋内通路がある。私が訪れたときは公開されていなかったが、ある貴族の厚意で見せてもらった。絨毯(じゅうたん)敷きの通路に美術品や宝石がふんだんに置かれて隠されている。抗争、暗殺を繰り返す血のにおいがした。表に出ると、ベッキオ橋が日差しを浴びてアルノ川に浮かんで見える。秘密の通路との明暗に息をのんだ。

 新国立劇場がツェムリンスキー《フィレンツェの悲劇》とプッチーニ《ジャンニ・スキッキ》の2作のオペラを併せて上演した(沼尻竜典指揮東京フィルハーモニー、4月14日)。共にフィレンツェを舞台に一つは愛憎劇、片や喜劇として、町を照らしだす。

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