
科学取材の経験が豊富な青野由利・客員編集委員のコラム。
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犬の性格は予想不可=青野由利
2022/5/14 02:00 990文字<do-ki> テレワークをするようになって近所で散歩中の犬と出会う機会が増えた。大きさも種類もさまざま。陽気でご機嫌なワンコをみるとこちらまで幸せな気分になる。 もし、次に犬を飼うなら? 「こういう性格の犬」と思う人は犬種に着目するかもしれない。 ちまたで言われるのは、「ラブラドルレトリバーは人
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ヒトゲノム完全解読=青野由利
2022/5/7 02:00 975文字<do-ki> その人は小柄で目立たず、控えめに座っていた。 1999年12月、英ロンドンで開かれた記者会見「ヒト染色体22番の全塩基配列解読」。招かれていたのはノーベル化学賞を2回受賞した生化学者、フレデリック・サンガーさんだ。 90年に始まった国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」のゴールは30億
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元に戻りたい?=青野由利
2022/4/30 02:01 970文字<do-ki> ゴールデンウイークが近づくと予定をたてなくては、という強迫観念に襲われる。通常よりお金をかけて混雑する場所には行きたくない。でも、まとめて休めるチャンスは少ない。 この2年、そんなジレンマから解放されてほっとした人は私だけではないのでは? 「みんな一斉に」が息苦しい人もいるはずだ。
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知られざるダーウィン=青野由利
2022/4/23 02:00 1003文字<do-ki> 進化論のチャールズ・ダーウィンが後半生を過ごした家を訪ねたことがある。英ケント州ダウン村にある「ダウンハウス」だ。 世の中に少なからずいるダーウィンの信奉者の一人というわけではない。ロンドンから1時間半程度で行けることに加え、一度「サンドウオーク」を歩いてみたいと思っていたからだ。
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脱ロシアと原発=青野由利
2022/4/16 02:00 997文字<do-ki> 世界を戦慄(せんりつ)させるロシアのウクライナ侵攻。軍事的に中立だったフィンランドも北大西洋条約機構(NATO)加盟に傾いている。 そう聞いて思い出したのは、2013年に北欧のこの国を訪問した時のことだ。 まず向かったのは首都ヘルシンキから高速バスで西へ4時間ほどのオルキルオト島。
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酔っ払ったサル仮説=青野由利
2022/4/9 02:01 974文字<do-ki> 今更な話だが、お酒と人類の関係が新型コロナウイルスの流行で気にかかるようになった。 お酒が入るとどうしても注意力が落ちる。マスクなしで大声で談笑すれば感染リスクが高まる。 だから流行が拡大するたび飲食店での酒類提供が制限されてきた。これが店には死活問題に。 裏を返せば、お酒がないと
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共有されないデータ=青野由利
2022/4/2 02:02 964文字<do-ki> 「問題は分析するデータがないことです」。先月、東北大が開催した新型コロナのシンポジウムで、感染症対策や公衆衛生が専門の押谷仁さんと小坂健さんが口をそろえていた。 実はこの問題、以前から聞いていたが解決していない。まるでジョークのような話なのだ。 たとえば、押谷さんが厚生労働省の専門
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シロツメクサの進化=青野由利
2022/3/26 02:01 1014文字<do-ki> 春の風景を彩る植物のひとつ、シロツメクサ。三つ葉の群れの中に四つ葉のクローバーを探したことのある人もいると思う。 古くからなじみのある植物だが、世界の都市で同じように進化を遂げていると知って驚いた。 今月、米サイエンス誌に公表された国際共同研究の成果で、地球規模で都市化が生物進化に
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科学か価値判断か=青野由利
2022/3/19 02:00 1001文字<do-ki> 「最初に指摘したいのは、それは科学の問題ではなく、価値の問題だということです」 米ハーバード大の疫学者、ビル・ハネージさんの言葉に「だから難しいんですよね」と思った。 米ニューヨーク・タイムズ紙が先週、ツイッターを使って開いた新型コロナとの「共存」をテーマにしたQ&Aイベント。 「
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理不尽に奪わないで=青野由利
2022/3/12 02:04 991文字<do-ki> 福島で原発過酷事故が起きた11年前、原稿を書く手が震えたことを忘れたわけではない。 原子炉の空だき、吹き飛ぶ原子炉建屋、放射性物質の環境への大量放出。ありえない、と思う出来事の連続に緊張は極限状態だった。 だが、白状すれば、その緊張感は年月とともに緩んだ。 その緩みに蹴りを入れたの
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戦時下の核の危うさ=青野由利
2022/3/5 02:01 988文字<do-ki> ウクライナへの軍事侵攻という暴挙の中で高まる核の危険性に慄然(りつぜん)とする。 ひとつはロシアのプーチン大統領がちらつかせた核兵器使用の脅し。核戦力を持つ部隊の「特別態勢」が何を意味するかはわからないが、「本当に使う気はない」と楽観してはいけないだろう。 そう感じるのは、つい先日
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超新星アラート=青野由利
2022/2/26 02:02 995文字<do-ki> あれからもう35年、と思うと感慨深い。 1987年2月23日。私たちの銀河系に隣接する大マゼラン星雲に超新星が出現した。 恒星が進化の果てに起こす大爆発。銀河系内や隣接銀河で起きれば肉眼でも見える。直近はへびつかい座に出現した1604年の「ケプラーの超新星」。380年ぶりとあって大
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ウイルスはまだ不安定=青野由利
2022/2/19 02:00 992文字<do-ki> 新型コロナのウイルスはまだ変化が進行中で不安定。政府分科会の尾身茂さんがそんなことを言っていた。 どういうこと? 感染症制御が専門の押谷仁さんに聞くと「そもそも安定している季節性インフルエンザと比較することに無理があるんです」。 インフルエンザウイルスは数十年に1回遺伝子が大きく変
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マスクをめぐって=青野由利
2022/2/12 02:01 990文字<do-ki> 北京冬季オリンピックを眺めていると、選手も関係者も、みんな高機能マスクをつけているように見える。 念のため国際オリンピック委員会(IOC)の規則集「プレーブック」を見ると、確かに「KN95、N95、FFP2、もしくはそれと同等の防護効果のあるマスク」と規定されている。 N95は粒子
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ハルティンの冒険=青野由利
2022/2/5 02:00 1021文字<do-ki> 先月末、病理学者のヨハン・ハルティンさんが米カリフォルニア州の自宅で亡くなった。97歳。 「誰?」と思うかもしれないが、私にとっては十数年前にやりとりした忘れられない科学者だ。 ニューヨーク・タイムズ紙の科学記者ジーナ・コラータさんが書いた訃報のタイトルは「1918年のウイルスの凍
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オミクロンはどこから=青野由利
2022/1/29 02:00 963文字<do-ki> 瞬く間に広がった新型コロナのオミクロン株。いつ誰が感染してもおかしくないと肌で感じている人は多いだろう。 このウイルス、非常に変異が多く、性質もこれまでの変異株とは様相が違う。元をただせばどこからやってきたのか。 まず、おさえておかねばならないのはオミクロン株はデルタ株やアルファ株
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火山噴火と気象津波=青野由利
2022/1/22 02:00 987文字<do-ki> トンガの海底火山フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイの大噴火は、なぜ日本に思いがけない「津波」をもたらしたのか。 海洋力学の専門家である東京大の日比谷紀之さんが、長崎湾で発生する「あびき」に似たメカニズムだとコメントしていた。 冬から春先にかけて前触れなく海面が上下する現象で、船の転覆
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オミクロン株の手ごわさ=青野由利
2022/1/15 02:01 975文字<do-ki> 大型ダンプカーから外れたタイヤがころがり歩行者を不意に襲う。聞くだに恐ろしい話だ。 被害者の男性は救急搬送され、命を救われたが、もし、新型コロナで病床が逼迫(ひっぱく)していたら? たらい回しにあったとしたら、これまた恐ろしい話だ。 オミクロン株の急速な感染拡大は予想された通りだ。
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海図150周年=青野由利
2022/1/8 02:02 991文字<do-ki> 今年いただいた年賀状に日本近海の海底地形図の絵はがきがあった。列島に沿った海溝や海底火山の連なりがよくわかり、「海図150周年記念」とある。 調べてみると、明治政府が近代的な海図作製を始めたのが1871年。日本が自力で作製した最初の海図「陸中國釜石港之図」が刊行されたのが翌72年。
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もしサンタクロースが=青野由利
2021/12/25 02:00 992文字<do-ki> もしサンタクロースがクリスマスイブにインフルエンザにかかっていたら? 子どもたちにプレゼントを届けることでどれだけ感染が広がるだろうか。 新型コロナの存在がまだわかっていない2年前の12月、ちょっとおちゃめなシミュレーションが豪医師会の専門誌に掲載された。 著者は感染症学が専門の古
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