(祥伝社新書・798円)
自分の記憶に自信たっぷりの人も、あまり自信がない人もいるが、自分の記憶が実は大きく違っているかもしれないとは、ほとんどの人が思うまい。だが、記憶には大きな間違いが少なくないと、心理学者が主に犯罪事例で示す。冤罪(えんざい)事件での虚偽の自白は、きわめて厳しい取り調べによって誘導された間違った記憶に依(よ)るものが多い。目撃証言も、危ういようだ。記憶は生活に仕事に重要だ。それがウソなのかもしれないとは、頭に入れておくべきだ。
記憶のメカニズムとして、次の事項が挙げられる。主観的な思いに記憶は左右される。誤情報が与えられると記憶が変容する。質問の仕方次第で記憶は誘導できる。記憶は辻褄(つじつま)を合わせる方向に向かう。自分の記憶を信じ込んではいけない。(尚)
毎日新聞 2009年11月22日 東京朝刊