★Monthly Book Time Interview with Mori Tatsuya
ドキュメンタリー映画の監督で作家の森達也さんは、放送禁止歌、オウム真理教、屠殺、死刑など、普通の人が避けて通るテーマに向き合ってきた。その彼が初の長編小説の題材として選んだのは、ジェノサイド=集団虐殺。狙いはどこにあるのか、益々過激さを増す森達也さんにお話をうかがった。
取材・文=鈴木理栄 写真=茂木一樹
◇『東京スタンピード』 1680円(税込) 毎日新聞社刊
--今回の作品を書かれたきっかけを教えてください。
森 関東大震災の後に大規模な朝鮮人虐殺があったことは知られています。このとき千葉県の福田村(現野田市)で「福田村事件」(※)という惨殺事件がありました。言葉のアクセントやイントネーションが地元民とは違うことを理由に、香川県から来た被差別部落の行商の一行15人のうち女子供も含めて9人が、村の自警団から虐殺された事件です。
この事件をテレビのディレクター時代に知って企画を立てたのだけど、結局は通りませんでした。テレビ局のプロデューサーからは、在日朝鮮人差別問題と被差別部落問題が絡んでいるから難しいと言われました。何も難しくない。普通にやればいいのに。
ならば活字で、と考えたのだけど、なかなか進みませんでした。当初はノンフィクションのつもりでいたのだけど、三年ほどが過ぎるうちにフィクションにしたくなって。最終的には小説という形になりました。
--ノンフィクション作品で知られる森さんが小説を書くとは、ちょっと意外でした。
森 そうですか? そもそも自主映画をやっていた二十代は、ドラマしか興味がなかった。その後、たまたまドキュメンタリー番組専門のテレビ制作会社に入ったので、ドキュメンタリーを作るようになったけれど。
--小説の主人公伊沢の経歴そのままですね(笑)。
森 その部分はそうですね。テレビドキュメンタリーのはずだった『A』が映画になって、それから執筆の依頼が来るようになった。でもドキュメンタリーだからノンフィクションと思われたらしく、依頼はノンフィクションばかりでした。でも読む本だってノンフィクションよりは文学作品ばかりだったし、僕の中では小説を書くことに違和感はなかったです。
2009年1月28日