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第63回読書世論調査:あすから読書週間 本との付き合い方は

 27日から始まる「読書週間」(11月9日まで)。毎年この時期に毎日新聞が実施している「読書世論調査」によると、1カ月に読む書籍は平均1・5冊で、「最低1冊は読む」人の割合が5割を切った。来年は「国民読書年」。「読書家」として知られる編集工学研究所所長の松岡正剛さん(65)とモデルで女優の杏さん(23)に、本との付き合い方を聞いた。【佐々本浩材】

 ◇かばんには常に数冊入ってます 本は「どこでもドア」--モデル・女優、杏さん

 本を読むのはたいてい外出中。かばんの中には常に数冊が入っていて、移動中や待ち時間には、すぐ本を広げてしまう。書店を見かけると、ふらっと立ち寄ることもしばしば。「活字中毒なんです」と笑う。

 「本は(ドラえもんの)『どこでもドア』のような存在。ページを開くだけで違う世界に一瞬で連れていってくれるけれど、閉じれば元の世界に戻れる。他のメディアのように機械などは必要なく、手軽で非常に自分に身近なツールじゃないかと思います」

 小さなころは、文学少女というほどではなかったと振り返る。小説も読んだが、漫画や図鑑を眺めるのも好きだった。

 小説にどっぷりとはまった契機は、中学時代の日本の歴史の授業。そのころ、新選組を扱った渡辺多恵子さんの漫画「風光る」(小学館)を読んでいたこともあって、特に幕末に興味を持った。自然と家にあった歴史小説を読むようになったという。

 「祖父が歴史好きで、聞くと丁寧に教えてくれて、関連する本を後で送ってくれもしました。興味を持つきっかけを与え、深めてくれたのは、祖父と言えるでしょうか。友人たちとも授業をきっかけに盛り上がって、史跡巡りをよくしましたね」

 読む本は漫画から小説、研究書まで、「歴史物」であれば幅広い。寺社巡りも好きで、今もよくあちこちに一人で出掛ける。最近の言葉でいえば典型的な「歴女(れきじょ)」だ。

 中学3年からモデルの仕事を始めると、待ち時間が増え、ますます本に触れるようになった。もちろん、歴史小説が中心。そこまではまってしまう歴史小説の魅力って何なのだろう。

 「知らないのに知っている。そんな不思議な感覚が常にあるんです。なぜ見たこともない風景が目に浮かんでくるのか。身分制度があった江戸時代の人間関係とか恋愛の感覚とか、現代ものとは違うのに理解できて、共感できたりする。その時代とのつながりは薄れながらも、まだ息づいているのかもしれません。時を超えても変わらない、そんな普遍的なものを感じさせてくれるのが魅力です」

 本について話す仕事も増えた。そのため「この本は好きだと思うよ」などと人から薦められると、必ずメモしておく。最近では「ビートルズ好きなら」と薦められた川上健一さんの「翼はいつまでも」(集英社文庫)を読んだ。

 「ビートルズに勇気をもらって変わっていく中学生の男の子の話。読後はさわやかなんだけど、ちょっと涙が出るという感じの小説。薦められる本は絶対自分では手に取らないから、こんな本があったんだという発見が大きいんです」

 読む本の広がりとともに、読み方も変わってきた。「この書き方かっこいい」と思ったり感動したページは、角を折る「ドッグイア」で目印を残すほか、帯の裏側に薦めてくれた人の名や、感じたことなどをメモするようになったという。

 「(本について)話したりする機会が増えているので、何が良かったのか感じたことをきちんと言葉にできるようにするのが今の目標。読書は自分の内面を鍛え、高めてくれる経験だと思っています」

 ◇喜怒哀楽とともにあるものです 自由な楽しみ方を--編集工学研究所所長・松岡正剛さん

 2006年に出版された「松岡正剛千夜千冊」(全7巻・求龍堂)は、松岡さんが00年2月からサイト上で連載していた本の感想をまとめたもの。自然科学から人文、社会科学まで幅広い分野の1144冊について、七つのテーマに分類した。

 サイト上の連載は今もほぼ週に1、2本のペースで続く。そんな多読家である松岡さんが読書の極意を公開したのが近著「多読術」(ちくまプリマー新書)。てっきり「多くの本を読む術」かと思ったら、どちらかというと「多様読書術」の意味を込めたという。

 「一般に、読書スタイルが固定化してしまっている。もっと自由に楽しんだ方が、結果的に多くの本と付き合えるのではないでしょうか。スニーカーを履いてとか、一杯ひっかけながらとか、よそ行きの格好でとか。本の内容に応じて多様な自己が、多様なスタイルで出てきていい。皆さん、読書文化を薫り高いものにし過ぎているんです」

 そんな意図を伝えようと、著書では造語も含め、多くの熟語を挙げた。「感読」「耽読(たんどく)」「乱読」「精読」「愛読」「食読」「吟読」……。

 「これでもまだまだ熟語が足りない。熟語がキーワードとして広まり、読書が多様なものだと気付いてもらえたら」

 確かに読書を敬遠する人は、堅苦しい世界ととらえがち。自分には理解できないかもと、及び腰になってしまう。

 「野球に例えれば、僕は(理解度が)3割5分に届いているかどうか。相手がすごい投手(著者)なら、4打席4三振もある。南方熊楠の全集などがそうです。それでも読み続けられたのは、『知的ですごい』作業だなどとは自覚しなかったから。普段の生活や喜怒哀楽とともにあるととらえていることが、読書のエンジンなのだと思う」

 読書とは、いろいろな人や歴史と「交際する」ことという。そんな松岡さん流の読書法の一端を著書で紹介している。一つは本を選んだり、実際に読む前に、まず目次にしっかりと目を通すこと。「目次は新聞の見出しが集約されているようなもの。キーワードが頭に入り、内容がスムーズに吸収されます」

 次に、マーキング読書。松岡さんは何だろうと思った部分に「△」、重要な主張と感じられる個所に「◎」など、読みながら印を付けていくという。「本は、あらかじめ文字を書き込んでくれているノートだと思った方がいい」。最後に、再読。「2度目はどの本でも、受け取り方がまったく違うことに気付かされる。今は2度読まないと読書じゃないと思っています」

 今月から東京にある書店「丸善」丸の内本店で、「松丸本舗(ほんぽ)」と題した売り場をプロデュースしている。テーマは「本はもっと遊びたがっている」。例えば作家の町田康さんや女優の山口智子さん、歌舞伎役者の市川亀治郎さん、資生堂の福原義春名誉会長らの実際の本棚を店内に再現し、並んでいる本を販売する。

 「協力したいと言ってくれる人が多く、本で遊びたい人が多いことが分かった。コーナーごとに変な暖簾(のれん)も付けてみた。本の飲んべえになろうかな。そんな気分で楽しんでほしい」

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 ■人物略歴

 ◇あん

 1986年、東京生まれ。父は俳優の渡辺謙さん。15歳でモデルデビューし、海外のファッションショーにも出演。現在は女性ファッション誌「Oggi」(小学館)の専属モデルとして活躍している。

 07年の「天国と地獄」(テレビ朝日系)でドラマ初出演。主な出演作は大河ドラマ「天地人」(NHK)や「華麗なるスパイ」(日本テレビ系)、映画では「櫻の園」(中原俊監督)。

 日テレ系で放送中の「サムライ・ハイスクール」では、主人公の幼なじみの女子高生を演じている。

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 ■人物略歴

 ◇まつおか・せいごう

 1944年、京都生まれ。早稲田大文学部卒。71年に工作舎を設立、雑誌「遊」を創刊した。東大客員教授や帝塚山大教授を経て、現在は87年に設立した編集工学研究所所長。

 さまざまな分野の知の成果を情報技術で応用、発展させる活動をしている。

 著書は「松岡正剛千夜千冊」「多読術」のほか、「知の編集術」(講談社現代新書)、「日本数寄」「山水思想」(以上、ちくま学芸文庫)、「白川静 漢字の世界観」(平凡社新書)など。

毎日新聞 2009年10月26日 東京朝刊

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