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サンデーらいぶらりぃ:小林 照幸・評『完本 紳士と淑女 1980-2009』徳岡孝夫・著

◆休刊で明かされた名物コラムの筆者名

◇『完本 紳士と淑女 1980-2009』徳岡孝夫・著(文春新書/1260円)

 本年5月をもって、40年の歴史に休刊という形でピリオドを打った月刊誌『諸君!』(文藝春秋刊)。同時に、巻頭を飾ってきた匿名の名物コラム「紳士と淑女」も80年1月号から30年の連載を閉じた。350回超の連載から精選したベスト版の本書がジャーナリストの徳岡孝夫氏(79歳)の名義で刊行されたのは、最終号の結びの一文で「……筆者は徳岡孝夫という者であった」と執筆者名を遂に明らかにしたからである。

 国内外の政治、経済、社会、文学、芸能、スポーツにおける折々の人物、団体を、辛口ながらもユーモア溢れるタッチで縦横無尽に斬った「紳士と淑女」。

『諸君!』という雑誌のテイストもあり、「紳士と淑女」の根底には日本という国に対する愛情が流れていたが、「なるほど!」とモノの見方、考え方を教えられた読者も多かっただろう。「相当な“目利き”でなければ書けない」と毎号、繰り返し読んでいた読者もいたはずだ。

 徳岡氏は元毎日新聞記者。サンデー毎日編集部在籍時は、あの三島由紀夫事件に遭遇し、現場である市ケ谷・自衛隊駐屯地で手紙と檄文を託された逸話も持つ。三島とは“肝胆相照らす”仲でもあったのはよく知られた話だ。

 連載最終号、そして、本書のまえがきで、徳岡氏は本年3月から血液がんの一種「悪性リンパ腫」の闘病生活を送り、視力も含めた体力の著しい低下を告白した。

『諸君!』の休刊が編集長から徳岡氏に伝えられたのは、闘病生活に入る直前だったという。くしくも、運命を共にしたのはドラマと言う他あるまい。「紳士と淑女」は、徳岡氏以外の執筆者を許さない技芸として完結したのである。

<サンデー毎日 2009年11月15日号より>

2009年11月4日

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