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サンデーらいぶらりぃ:間室 道子・評「隅田川」中山可穂・著

◆行き場のない愛

◇「隅田川」(『悲歌 エレジー』収録)中山可穂・著(角川書店/税込1575円)

 届かぬ想いをテーマにした三つの収録作から、紹介するのは「隅田川」。

「わたし」が店番をしているゲームセンターに、金属バットを持った少女二人がやってくる。

「カップルの子供の顔をシミュレートする機械」を叩き壊して逃げた二人は、隅田川に飛び込み、心中した。

 女同士では、どんな至高の愛をもってしても、子供という結晶は生まれない。神の摂理への強烈な怒りをぶつけた行為だった。

 かつて女同士の愛に破れた「わたし」は、事件を機にカメラマン志望の道へ戻る。隅田川の写真を撮り続けるのが、日課となった。

 五年後「わたし」は夜の川で奇妙な人物と出会う。背中に赤い薔薇の刺?をした黒マントの男は、心中した少女の父親だと名乗った。

 娘を弔うためこの近くに薔薇園を作り、住みついた。身投げ少女たちを救うため、毎日パトロールをしている。全身から孤独感を放ち、悲哀を滴らせて男は語った。

 だが、彼はある日突然消える。ホームレスの話では、あの男はただのロリコンで、自分のテントに少女たちを引っぱり込んでいたという。真相はどちらなのか。

 それからまもなく、秋の大雨で隅田川が決壊する。濁流はすさまじく、両岸の街を呑み込む。おびただしい漂流物に混じって、真紅の薔薇の花びらが、大量に流れてきた。「わたし」が男の死を直感したところで、話は終わる。

 最後の一幕が表しているのは、ただ流れゆく愛の哀しみだ。愛しい者と向き合えない絶望は、男の正体に関係なく、いたましい。

 彼の化身のような水の氾濫。どこまで行っても実を結ばぬ愛が堰を切った。そこには、奇妙な解放感も漂ってはいないか。

<サンデー毎日 2009年11月29日号より>

2009年11月17日

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