◇4.8リットル・V10、560ps/48.9kg・m、325km/h
世界最高峰のJスーパースポーツ誕生
レクサスLFAは、4.8リットル・V10エンジンを積むFR駆動の2シーター・スーパースポーツである。2000年の開発着手から9年の時を経て、その全容が明らかになった。09年の東京モーターショーで初公開された車両は、“プロトタイプ”と称されていたが、実質的には市販バージョンに近い。
LFAは世界500台の限定販売車だ。日本では10年末以降に発売し、12年にデリバリーが完了する販売プランである。日本の販売価格は3750万円。ボディー色と内装トリムの組み合わせやオプションのラインアップ、販売システムなど詳細は未定である(09年10月中旬現在)。
高級車販売チャンネルのレクサスにとって、官能的なオーラと世界屈指のブランド性、フェラーリやポルシェなどと同等のパフォーマンスを秘めた高性能かつラグジュアリーなスポーツモデルは、イメージリーダーとして欠かせない存在だ。LFAは2000年のプロジェクト始動後、04年10月にニュルブルクリンク・サーキットで実走行テストを開始。05年、07~08年のデトロイト・ショーへの参考出品と、08~09年のニュルブルクリンク24時間レースへの参戦を経て09年10月、日本で待望のワールドプレミアを迎えた。
新型車は、トヨタ哲学に基づくスーパースポーツカー理論と、メーカーの技術の粋を結集して開発された。メーカーが掲げるスーパースポーツの定義は、“世界最高水準の走行性能と官能性能への到達”である。走行性能は、数値やグラフなどで可視化・評価できる性能を示す。最高速度は、“300km/h以上”、0→100km/h加速は“4秒以内”を目標値とした。そして官能性能は、ドライバーがハートや体で感じる感性面のフィーリングである。LFAの場合、圧倒的な加速性能や俊敏なレスポンス、ダイレクトなハンドリングタッチなどはもとより、高周波基調のエンジンサウンドをはじめ、トータルでドライバーの五感を刺激し、陶酔の世界へと導く一級のスポーツ性能をスローガンとした。
この課題をクリアするために、メーカーは新技術の採用ではなく、“既存のテクノロジーの高精度化”という設計方針を選択。もちろん、軽量化目的のボディ構造など、LFAが初採用の技術はいくつもあるが、メカニズム面は基本的にトヨタが持つ最高峰のデバイスを精緻にチューニングして搭載。たとえばトランスミッションは、スポーツカーの主流になりつつあるデュアルクラッチタイプではなく、油圧式のシングルクラッチ方式が採用された。
パッケージングはスーパースポーツのセオリーに沿って、運動性能面、動力性能面、空間面の高度な調整を推進した。一例を挙げると、運動性能を支える前後重量配分は、FRにもかかわらず、理想値(50対50)に近い48対52に仕上がっている。これは、バッテリーのボディー後部配置やトランスミッションの後輪車軸上マウント(リアトランスアクスル方式)、エンジン補器類(オイルポンプやウオーターポンプなど)のエンジン後方移設などがもたらした数値である。
メーカーが理想としたモデル像は“記録と記憶に残るハイパフォーマンスカー”。日本が世界に誇るスーパーモデルの誕生である。
外観デザインは、コンセプトカー時代のLF-A(車名は最新プロトタイプから“LFA”に変更)と基本的に共通。両モデルのエクステリアの違いは、主にヘッドライトの形状だけだ。3本出しセンターマウントのエグゾーストパイプをはじめ、オリジナル性が高いディテールは、市販バージョンに継承されている。
ユーザーがスーパーカーと認識するスタイリングの構築とともに、メーカーがとくにこだわった事案は“エアロダイナミクス”である。市街地などの低速域から、サーキット走行時の超高速域まで、状況に応じたシュアなステアリングフィールを目標に、走行中のエア整流のセッティングを煮詰めた。ボディー後部に可変式のアクティブリアウイングを採用し、アンダーボディはフルフラット化。そしてリア部にディフューザーを配置して、ダウンフォースを効果的に発生させる態勢を整えた。エアマネジメント効果で、アクティブリアウイング格納時の空気抵抗係数(Cd値)は0.31をマークする。
エア制御と並ぶ重要課題として、十分な剛性を確保したうえでの軽量化は見逃せない。キャビンのフレーム構造などは、航空宇宙やカーレースの分野でメジャーなCFRP(カーボン・ファイバー・レインフォースド・プラスチック)をベースに構築。メーカーは「同形状のスチールボディーに比べて、トータルで100~150kgの軽量化効果がある」と説明。このCFRPは、製造過程で独自開発のオートメーション化を推進し、将来の量産化を視野に入れているという。
走行中の荷重移動抑制に貢献するボディーの低重心化は、スポーツカーには欠かせない必須条件である。LFAは、エンジンオイル循環系をドライサンプ化し、エンジンの搭載位置を下げるといった工夫で、クラストップレベルの低重心化(2名乗車時450mm)に成功。そして、低重心化の一環として、最低地上高は115mmに設定された。
前後異径サイズ(F265/35ZR20、R305/30ZR20)のタイヤはブリヂストン製である。1.エンジン出力を受け止めるサイズ2.ドライバーの運転操作に瞬時に反応する応答性3.サーキットの限界走行時におけるグリップ力4.荒れた路面でも性能が発揮できる接地性、をコンセプトに企画された。ニュルブルクリンク・サーキットで徹底した走り込みを行い、収集データを“限界走行域の正確なインフォメーションとコントロール性の確保”にフィードバックしたという。
BBS製の専用20インチアルミホイールは、高剛性と軽量化の高度なバランスを目標に設計。リム形状は、大径ブレーキローター採用を前提に、リム幅の最もくぼんだ部分の幅を広くしたデザインとし、軽量化にも配慮した。
過酷な状況下で最大の効果を発揮する冷却用エアダクトは、エクステリアの各部に設置。フロントバンパーは、左右にブレーキ系統の冷却用ダクトを装備。この部分とアンダーカバーから冷却風を効果的に取り入れる構造にし、ハードなサーキット走行時でも変化が少ない、安定したブレーキフィールを工夫した。
新型車のサイズは全長×全幅×全高4505×1895×1220mm。ホイールベースは2605mmである。
キャビンは、コンセプトカーのLF-Aから最も大きく変化した部分である。ドアに内張りを装備し、シートに電動パワースライドやヒーター機構を装備するなど、室内各部の仕様を市販用に仕立て上げている。
本革製の専用設計シートは、乗員が前後車軸間の中心に位置する、レーシングカー感覚のレイアウト。これは、ドライバーが車両の旋回軸に近い位置に着座することで、車両の挙動変化をよりいっそう直感的に感じられるようにするためのポジションである。ただし、シートを一般的なFRモデルよりも中央寄りにマウントするには、センタートンネルの幅を狭く設計する必要がある。このため、トランスミッションや排気管などの配置を見直し、センタートンネルの室内への張り出しを抑制する工夫が施された。
カーボン素材と本革のコンビステアリングは、慣性モーメント低減を目的に下部を28mmカットしたフラットボトム仕上げ。ステアリングコラムの右横に、カーボン製のエンジンスタートボタンを設置。エンジン始動は、イグニッションキーとこのボタンとの併用で行い、イグニッションキーをオン状態にしたうえでボタンを押すと、エンジンが目覚める。
ステアリングコラムの左右内側に固定装備したパドルスイッチは、左側がシフトダウン、右側がシフトアップ用である。スイッチの操作荷重は、アップ側よりもダウン側を重く設定してある。メーカーはその理由を「スポーツ走行の際、ドライバーの心理状態は、シフトアップ時よりもダウン時のほうが緊張した状態になるから」と説明している。
メータークラスターの右横には、サテライトスイッチとして、オート/スポーツ/ノーマル/ウエットの機能が任意に選択できるドライビングモード切り替えダイヤルがある。これはエンジンとブレーキとの協調制御で、トランスミッションの特性をドライバーの感性とマッチするようにコントロールし、人車一体感の運転感覚をさらに際立たせるための機能である。モード選択時は、メーター内に各機能の作動状況がディスプレイ表示される仕組みになっている。たとえば、ダイヤル操作でスポーツモードを選択した場合、文字盤のカラーがブラックからホワイトに変化し、メーター内の表示スケールも変わる。
そして、4モード選択ダイヤルの下に、走行状況に合わせて、変速スピードを約0.2~1秒の間で瞬時に7段階で切り替える“シフトタイムスイッチ”を標準装備。なお、メータークラスター左横のダイヤル操作式サテライトスイッチは、ヘッドライトのオン/オフ用である。
センターコンソール部には、レクサスRXから装備しはじめたリモートタッチコントローラーをビルトイン。クラスター中央上部に配したディスプレーに映し出される各機能を、ドライバーが直感的に安全に操作できる最新コミュニケーションシステムである。
メーターは単眼レイアウトで、タコメーターは垂直指針。スピードメーターは文字盤内に表示されるデジタル式である。文字盤の左横はフューエルゲージ、右側は油圧計などの機能表示ゾーンだ。
エンジンはバンク角度72度の4.8リットル・V10DOHC40V(1LR-GUE型)を、LFA用に新開発して搭載。レッドゾーンを9000rpmに設定した高回転型のスポーツユニットである。このラインまで途切れることなく、ストレスフリーで持続される圧倒的な加速力、ドライバーのイメージとシンクロした回転フィール、アクセルワークに連動したシャープなレスポンスを重視したチューニングを施してある。
最高出力/最大トルクは560ps/8700rpm、48.9kg・m/6800rpm。2000rpmで38.8kg・mのトルクを発生し、3700~9000rpmの幅広い領域で最大トルクの90%を発揮する、フレキシブルな特性を持つ。
パワーバンドが広いエンジン特性を生かす一方で、超高速走行に対応して強化されたトランスミッションは、メーカーがASG(オートメーテッド・シーケンシャル・ギアボックス)と名づけた6速の油圧シングルクラッチ式。このミッションを介して、最高速度325km/h、0→100km/h加速3.7秒のハイパフォーマンスを発揮する。
軽量&コンパクト設計は、新型V10エンジンの特徴のひとつだ。このユニットは、すでに市販車に積む5リットル・V8DOHC32V(2UR-GSE型)よりも小型のうえ、材質にアルミニウムやチタン、マグネシウムを多用したライトウエイト化で、車重低減や前後重量配分の適正化に配慮した。
サウンドは、高回転域でV10のパフォーマンスが乗員に効果的に伝わるチューニングを実施。エンジン両バンクの排気管を等長にした排気システムは、3本出しテールパイプのサイズを工夫して、澄みきった連続音と、スポーツ走行時の高揚感を際立たせるサウンド作りが実践された。排気マフラーは切り替え式で、エンジンの回転に応じてバルブが自動開閉し、低回転域は低音主体、高回転域は高音メインの音色を奏でる。
サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンで、リアはマルチリンク。ショックアブソーバーは、専用開発したリザーバータンク別体のアルミ製単筒式。これは、車速や走行状況を問わず、つねに理想的な減衰力を確保するための最新デバイスだ。ダンパーは、ネジ式の車高調整機構を装備。低重心化を目的に115mmに設定した最低地上高を、使用条件に応じてベストな位置にコントロールするための配慮である。
4輪ディスクブレーキは、フロントに対向6ピストン、リアに対向4ピストンのアルミモノブロック構造ブレーキキャリパーを採用。ブレーキディスクは、CCM(カーボン・セラミック・マテリアル)製。この素材の採用で、従来の鋳造製に対して、1輪分で約5kgの軽量化に成功し、バネ下重量の低減(タイヤの接地性が向上する)を図った。ブレーキキャリパーの配置は車体中央に極力近づけて、車両の慣性モーメントへの影響を抑制。ブレーキローター径はフロントが390mmで、リアは360mmである。
統合制御技術は、VDIMを専用チューニングのスポーツモード付きとした。この機能は、とくにサーキットの限界領域で威力を発揮する、プロドライバー用の制御機構である。
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