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「サイドウェイズ」小日向文世さんに聞く「年を取ることはカッコいい」

「道雄の、外国にいておどおどしちゃうところとか立ちつくしてしまうところは、デフォルメしていますが、僕の要素でもあります」と話していた小日向文世さん
「道雄の、外国にいておどおどしちゃうところとか立ちつくしてしまうところは、デフォルメしていますが、僕の要素でもあります」と話していた小日向文世さん

 40代の中年男2人がカリフォルニアワインの聖地「ナパ・バレー」巡りを通して、「人生における寄り道」のすばらしさをうたった映画「サイドウェイズ」が31日、公開された。キャリアも私生活もさえない中年男、道雄を演じた小日向文世さんは「中高年になってからだって、こんなに楽しいことがあるんだと、若者に自慢できるような映画になっていたらうれしい」と語る。【りんたいこ/フリーライター】

 オリジナルは、04年度のアカデミー賞脚色賞に輝いた米映画「サイドウェイ」(アレクサンダー・ペイン監督)。「踊る大捜査線」シリーズの亀山千広さんのプロデュースで、ハリウッドのスタッフとともにリメークした。道雄の親友・大介役に生瀬勝久さん、道雄の20年前の片思いの相手、麻有子に鈴木京香さん、さらに、麻有子の友人ミナに菊地凛子さんが出演している。

 --日本人が主人公のせいか、オリジナルよりも共感できました。

 分かりやすいですよね。自分たちがあちら(カリフォルニア)に行ったら、もしかしたらあんなふうに(どうしてよいかわからず)立ち尽くしてしまうのかな、と思い当たる節があったり、道雄たちの挙動にクスっと笑えるところがあったり、そういうところがいいですよね。

 --ハリウッドの製作陣からは、大介役の生瀬勝久さんと「最も情けなさそうな2人組」と言われたそうですね。

 宣伝文句的な部分もあると思うんですが、それでもハリウッドの映画会社の人が作品を見てそう思ってくれたのなら、僕たちの演技は成功だったということなのでうれしいです。

 --かつらをつけての演技でした。

映画の一場面。(C)2009 20th Century Fox and Fuji Television
映画の一場面。(C)2009 20th Century Fox and Fuji Television

 チーフプロデューサーやカメラマンさんから、生瀬さんと僕は大学の先輩と後輩のようには見せたくない、同世代に見せたいと言われました。実年齢が、僕のほうが生瀬さんより6歳ほど上ですが、この頭じゃ、僕のほうがちょっと年上になっちゃうんで(笑い)。ですから、同じ年だけど少し先に行っちゃってるようなかつらを作ったんです。現場では、そのかつらを1日中つけていたんで、スタッフも、小日向の顔はこうだと思っていたみたいです。たまにカツラをとって「お疲れ様でした」っていうと、「おお」と戸惑っていました。道雄の父に見えたんでしょうかね(笑い)。

 --小日向さんが演じられた道雄は、かなり人のいい男性です。

 道雄については、ときどき、ちょっとイライラしました。そんなに女性と付き合ったことがないんでしょうね。麻有子(鈴木さん)とちょっといい雰囲気になってキスしただけで、「おれについて来い」みたいなことを言っちゃう。何いってんのって、逆に(麻有子に)反論されて、さっきのキスは何だったんだって考え込んじゃうような男。「だからお前はモテないんだよ」という思いはありました。それが、段々いとおしくなって、しまいには、何とか頑張れ!と応援したくなるような人間になっていきました。

 --実際の小日向さんは?

 道雄ほどではないです。ただ、大介のように、あそこまで女性に対して大胆にはなれない。道雄と大介の中間。どちらかを選べといわれたら、やっぱり道雄タイプなんでしょうね。

 --今回の作品は、人生の寄り道をすることによって、人間として豊かになっていくというお話ですが、小日向さんご自身は人生の寄り道をしたことはありますか。

 僕は23歳から役者を始めましたが、それ以降、寄り道は全くしていません。何かにチャレンジしようということもないですし、(経験したこと)すべてが役者に向かっていったので、寄り道という言葉に当たるものは思いつかないんですよね。ただ、18歳で上京したんですが、そのときは(デザインの勉強をするためで)役者をやりたかったわけではなかった。でも、上京した年の冬にスキーに行って複雑骨折をして、1年間入退院を繰り返した。それがあって、結果的に俳優になったという経緯があるので、寄り道という言葉がふさわしいかどうかはわからないけど、その19歳の1年間が、決して楽しいものではなかったけれど、今にして思えば僕にとって、とても大きな意味を持つ時間だったと思います。

 --作品を待つ人々にメッセージを。

 中高年になっていくと、肉体的にも衰えていくし、顔の筋肉は下がるしで、若い人とどうしても比べちゃいますよね。でも、40代になってからだって、こんなにすてきな恋ができるんだ、すてきな時間を持つことができるんだと、若者に向けて自慢できるような映画になっていたらいいなと思うし、そういうふうにみなさんが見てくれたらうれしいですね。中年になると、老い先短いと考えがちですが、そうではなく、年を取るのも悪くないと僕は思いたいんです。年を取るほど若い人をうらやましがるのは悔しいじゃないですか。

 --歳月を重ねるごとにうまみが増すのは、ワインと一緒ですね。

 そうそう。熟成してこそうまい。見た目じゃないんですよ。自信を持ちながら年を取りたいと僕自身もそう思うし、みなさんにもそうあってほしい。だって、長い年月の間にたくさんの苦労をしているということは、カッコいいことじゃないですか。

 --ところで、最後に「エンターテインメントとの初めての出合い、あなたにとってのポップカルチャー」をおうかがいしているのですが、小日向さんにとっての初めてのポップカルチャーとは?

 僕の家では、昭和34(1959)年に天皇陛下がご結婚なさった年にテレビを買いました。当時僕は5、6歳で、そのときに見た「夢であいましょう」というバラエティー番組に出ていた渥美清さんが、子供心にものすごく面白い人だと思った。それが、もしかしたら、僕が俳優を目指す一つのきっかけになっているのかもしれません。それと、ダッコちゃん人形(60年発売)。あれが初めて日本でブームになったとき、父がどこかから手に入れてきて、ここ(腕)に付けていた記憶があります。

 <プロフィル>

 1954年、北海道生まれ。東京写真専門学校卒業後の77年、オンシアター自由劇場に入団。96年の解散まで数々の舞台で活躍する。その後は映画やテレビに活動の場を広げ、「愛を乞うひと」(98年)や「みんなのいえ」(01年)、ドラマ「救命病棟24時」(第2期・01年)など数々の作品に出演。柔和な雰囲気と巧みな演技でさまざまな役をこなせる演技派として活躍。映画初主演は「銀のエンゼル」(04年)。ほかに「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(05、07年)、「ザ・マジックアワー」(08年)、「重力ピエロ」(09年)など。ドラマ「あしたの、喜多善男~世界一不運な男の、奇跡の11日間~」(08年)で連続ドラマ初主演した。

2009年10月31日

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