古今亭菊之丞(きくのじょう)には今風の「イケメン」という呼び方は似合わない。だが、高座姿を見ると「色男」「様子がいい」と言いたくなる。若旦那(だんな)や花魁(おいらん)を演じる仕草に定評があり、酒の飲み方も実に格好がいい。
10月31日午後6時半から東京・上野の鈴本演芸場で第1回菊之丞独演会がある(当日券は立ち見のみ)。実は、この会は落語家にとって大変な栄誉なのだ。
寄席は12月を除き、31日がある月には特別プログラム「余一会」を組む。鈴本はこれまで、5月と10月の末に柳家小三治の独演会を開いていた。だが、通算59回を重ねて、2007年10月で終了。その後継として、寄席を営む席亭が菊之丞を指名したのだ。
「実は一昨年、お席亭に『勉強会をやりたいんですけど』とお願いしたら、『ああ、あそこは小三治さんと同じぐらいのキャリアの人に任せたいから。ごめんね』と断られてしまって。ところが昨年、お席亭に呼ばれたんです。『今、独演会とかやってる?』『そんな大きな会はやってないです』『じゃあ、5月と10月の余一、やらない?』『えーっ、いいんですか、私で』。驚きました」
第1回の演目は、道楽者の若旦那が登場する陽気な噺(はなし)「湯屋番」と上方の大ネタ「らくだ」。後者はネタおろしだ。「主人公のらくだは冒頭から死んでますし、長屋の人間は汚い格好。目を覆うような場面もあって『イメージと合わない』なんて言われますが、この会で自分に残る噺を作りたい。なにしろ小三治師匠は59回ですから、長く続けられるように、あまり気負わないでやっていきたい」
菊之丞は37歳。独演会を60回続ければ67歳だ。そのとき、どんな噺家になっているだろう。【油井雅和】
★菊之丞情報★
第552回三越落語会=11月6日午後6時、東京・日本橋の三越劇場。雲助、小満ん、菊之丞、遊雀、全楽が出演。問い合わせは0120・03・9354へ。
=毎週木曜日に掲載
毎日新聞 2009年10月29日 東京夕刊