山形県立の山形中央がセンバツ初出場を決めた。昨秋の県大会準優勝、東北大会ベスト8の実績を残し、21世紀枠での選出。山形の公立校が甲子園に出場するのは、94年夏の鶴岡工以来となる。快挙を支えた要因の一つが、硬式球とのつきあい方にあった。
1月下旬の夜。山形市立第七中3年の鈴木涼太君は、室内練習場で硬球を次々とネットに投げつけていた。受け手がいないのは、必要以上にコントロールを意識せず、素直なフォームを身につけるためだ。昨年6月に初めて硬球を握ってから半年以上たち、軟球よりも少し重く、指に吸い付くような皮革の感触もなじんできた。
山形には中学3年の夏に軟式を引退した選手が対象の硬式野球リーグがあり、全県で23チームが活動する。硬球に慣らす野球教室は少なくないが、このリーグのミソは試合。4地区に分かれて週末にリーグ戦を行い、10月には地区代表によるトーナメントもある。高校入学までに硬球で十数試合の経験ができるわけだ。入学直前まで練習を続け、冬は室内で基礎を復習する。
山形県は甲子園の成績が芳しくない。夏の甲子園での通算17勝は47都道府県中最下位。センバツの9勝も41位だ。「弱い山形」のイメージ払しょくを目指し、県教育委員会が動いたのは96年。日本生命野球部の元監督、佐竹政和さんを「スポーツアドバイザー」に招いた。佐竹さんは約5年間の活動の中で、「早めに硬球を経験させる」ことを訴え、01年に8チームによる中学生の硬式リーグが始まった。
チームの監督、コーチは会社員や自営業者が、審判は保護者らが手弁当で務め、地域で支える。それでも、チーム数は増えていった。背景には、東海大山形、酒田南、羽黒といった県外出身者を中心に据える強豪私立の台頭がある。95年以降は県内選手の多い日大山形を除けば、この3校が甲子園を独占。「地元選手にも甲子園出場の夢を」との思いが募っていた。
リーグ発足から9年。鈴木君が所属するチームの遠藤武史監督(31)は「高校生の大会の選手名簿に、リーグ出身者の名前が増えてきた」と手応えを感じている。山形中央では部員30人のうち、ほぼ3分の2が硬式リーグ経験者だ。
リーグを巣立った選手がコーチとして戻ってくる好循環も生まれている。「高校に入って、すぐにレギュラー争いをしたい」と話す鈴木君。中学生にとって引退からの9カ月は、貴重な成長の機会になる。【吉見裕都】=つづく
毎日新聞 2010年2月3日 東京朝刊
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